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心のたねを言の葉として

能登半島地震と原発について かわはら先生のラジオ原発出前授業

能登半島地震原発について

かわはら先生のラジオ原発出前授業

RADIOワンダーストレージ 2024/2/17

 

〇1月1日に能登半島で大きな地震がありましたが、震源地に近いところにある志賀原発は大丈夫だったのですか?
・最大震度7を観測した能登半島地震は、震源地の珠洲市輪島市で大きな被害をもたらしましたが、震源断層から10キロほどの地点にある北陸電力の志賀(しか)原発でも1号機地下で震度5強を観測しました。放射能が外部に漏れるというような深刻な原発事故にはなりませんでしたが、1号機の燃料プールのポンプが40分間停止したり、1・2号機の使用済み核燃料プールの水が地震の揺れによってプールの外に溢れ出すということが起きました。また変圧器が破損して油が外部に漏れるなどし、外部電源の一部が使えなくなってしまったり、非常用ディーゼル発電機が停止するようなトラブルも発生しています。志賀原発の設計上の時に設定した耐震性の基準地震動の加速度は1号機では918ガル、2号機では846ガルまででしたが、今回の地震では1号機では957ガル、2号機では871ガルを観測し、それぞれ想定を上回っていました。

 

〇へぇー、あちこち壊れて、けっこう危なかったんですね。でも志賀原発は動いていなかったから放射能が漏れるような事故にはならなかったのではないですか?
・そうです。志賀原発は2011年の3月の福島第一原発事故の後から稼働停止して、現在まで12年間動いていませんでした。もし志賀原発が動いて発電をしていて、原発敷地の直下で震度7のような地震が起きたり、巨大な津波原発を襲ったなら、福島第一原発のような深刻な原発事故が起きた可能性がありました。福島第一原発では、地震によって送電線が倒れて外部からの電源が失われ、さらに津波によって非常用のディーゼル発電機も使えなくなってしまい、いわゆるブラック・アウト状態ですべての電源を失ってしまいました。それによって原子炉内の核燃料を冷却するためのポンプが動かなくなり、原子炉内の冷却水が全て蒸発してしまい、核燃料が全て溶け落ちてしまうというメルト・ダウンが起きてしまいました。今回の志賀原発では、原発は停止中で、核燃料は原子炉から抜いてありましたので、福島第一原発のようなことになる可能性はありませんでした。しかし、原発の内部には、使用済み核燃料を保管しているプールがあるのですが、このプール内を冷却しているポンプが、もし電源喪失によって止まったなら、福島第一原発のようなメルト・ダウンが起きる可能性があったのです。つまり、原発は動いていても、止まっていても、電源をすべて失ってしまうような事態が起きてしまうと、福島第一原発のような大事故が起きて、外部に放射能が漏れ出てしまうような事態(苛酷事故)になる可能性があるのです。

 

〇そうなんですか。そもそもこんな地震が多発している地域に原発を建てて大丈夫なんですか?
・今回の能登半島地震は、半島沖に延びる活断層によって引き起こされました。震源域では複数の活断層が連動したものとみられています。日本海沿岸には、このような活断層がいくつも走っていると言われていますが、このあたりの新潟県・石川県・福井県には原発が沢山立ち並んでおり、日本の原発銀座とも言われている地域です。その中には、すでに稼働している原発があったり、再稼働にむけて準備をしている原発もあります。今回の地震では原発から放射能が漏れ出だすというような苛酷事故にはなりませんでしたが、だから日本の原発は安全で大丈夫だということにはなりません。そもそも、このような地震多発地帯に、いくつもの原発が建てられているということ自体が、大変危険ことであると思います。今回の地震では、能登半島の北側の海岸線100キロ近くの広範囲にわたって最大で4メートル以上の地盤の隆起が確認されました。地盤が隆起した場所から原発までは、わずか9キロくらいだったそうです。もし、原発の敷地内でこのような地盤の隆起が起きたなら、冷却水を取り込むことが出来なくなったり、原発施設内のパイプが破断してしまうなど、原発事故につながる深刻な被害が想定されます。今回の震源地である珠洲市は、かつて原発の建設が予定されていましたが、住民らの反対運動によって建設が中止された場所です。もし反対運動が起きず、そのまま珠洲原発が建設されて、この地震の時に稼働していたなら、間違いなく甚大な被害をこうむって、福島第一原発のような大事故になった可能性がありました。

 

〇そうだったんですか。もし志賀原発福島第一原発のような放射能が外部に漏れ出るような事故がおきたら、どうなったのでしょうか?
・今回の能登半島地震では、石川県が志賀原発の重大事故の時の避難ルートに定めた国道や県道計11路線のうち7路線で崩壊や亀裂による通行止めが起きています。原発事故の避難計画では原発から5キロ圏の住民が先に避難して、5~30キロ圏は自宅や避難所に屋内退避するようになっています。しかし、今回の能登半島地震による被害によって、5キロ圏内の住民の避難は、道路の崩壊や亀裂によって困難となり、30キロ圏内の市町村では住宅の倒壊などで、とても屋内退避などできないところが多数ありました。30キロ圏内にある輪島市穴水町では8集落で435人が一週間にわたって孤立状態となりました。また放射性物質の敷地外漏洩を監視するモニタリング・ポストも18カ所が壊れて測定ができなくなり、避難を判断するデータが得られませんでした。現在の避難計画では、今回の能登半島地震のような事態の時に、放射能が外部に漏れ出るような原発事故が起きた場合には、避難や屋内退避もままならず、深刻な放射能被害が起きることが明らかになりました。

 

〇北海道の泊原発は大丈夫なんですか?
・北海道の泊原発も、積丹半島沖の海底に活断層の存在が指摘されており、いつ巨大地震が起きてもおかしくありません。1993年にはマグニチュード7.8の北海道南西沖地震が発生し、奥尻島が巨大津波に襲われました。泊原発がある周辺には過去の巨大地震によって海岸が隆起している地形がみられます。泊原発は2012年の5月から全て停止していますが、現在再稼働にむけての審査が行われています。いま問題となっているのは火山の噴火によって火砕流原発の敷地に到達する可能性についてです。なによりも問題なのは、今回の能登半島地震で明らかになった避難計画の実効性の問題です。道の防災計画では、泊原発放射能が漏れ出るような苛酷事故が起きた場合には、半径5キロ圏内の住民2600人はバスや自家用車で区域外に避難し、5~30キロ圏内の住民は屋内退避させることになっています。しかし、今回の地震のように避難経路となる国道が損壊して通れなくなる可能性があります。その場合は海上からの船やヘリコプターの使用を想定していますが、津波による海岸線の破壊や隆起によって港が使用できなくなることも予想されます。なによりも、地震津波によって家屋が倒壊してしまえば、屋内退避そのものが不可能になってしまいます。

 

〇そもそも地震大国の日本に原発がたくさんあるということ自体が、本当に心配なことですね。
・わが国の原発の耐震性の設計基準は基準地震動と呼ばれ、これに基づいて耐震補強工事がなされます。この基準地震動を超える地震の襲われると、原発の施設が破壊される可能性があり、極めて危険です。この基準地震動は加速度の単位であるガルで示されますが、日本にあるほとんどの原発の基準地震動は1000ガル以下になっています。しかし2011年の東日本大震災の時は2933ガル、2018年の北海道胆振東部地震の時は1796ガルでした。わが国においては1000ガルを超える地震は決して珍しくないのです。ちなみにハウスメーカー三井ホームは4022ガルに耐えられる一般住宅を建設しています。一般住宅よりも耐震性の低い日本の原発は、はたしてこれから起きるかもしれない巨大地震に耐えられるのでしょうか。今回の能登半島地震では、改めて原発地震に対して脆弱であることだけでなく、もし放射能が漏れ出るような苛酷事故が同時に起きたなら、その避難はきわめて困難なものであり、深刻な被害が出ることが予想されることが明らかになりました。そもそも地震大国である日本において、原発のような危険なものを建設していくこと自体が間違いだったのです。いまエネルギー危機で電気代が上がっていく中、原発を再稼働させようという動きが進んでいますが、とんでもない話です。すみやかに、いま動いている原発を止めていき、まだ動いていない原発を含めて、順次廃炉にしていかなければならないと思います。