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心のたねを言の葉として

小池百合子東京都知事の学歴詐称問題

小池百合子東京都知事学歴詐称問題

黒木 亮

JBpress

 

 小池百合子東京都知事が、自己の学歴詐称疑惑を隠蔽するため、2020年6月9日に日本外国特派員協会(FCCJ)で開かれた郷原信郎弁護士と筆者の記者会見にぶつける形で、カイロ大学の声明文を“自作自演”したことが、元側近の小島敏郎氏が「文藝春秋」に寄稿した手記によって暴露された。
 小池氏は、筆者らの会見前日に元ジャーナリストでやはり当時側近だったA氏に対し、「明日の4時から郷原と黒木亮が外国記者クラブで記者会見とのこと。その前に全部済ませます」とメールしていた。
 しかし、あの会見に関する小池氏の工作は、それだけではなかったようだ。


 ◆ 直前に公開された声明文をしっかり印刷して手元に
 FCCJでの会見で、質疑応答セッションが始まると、日本在住のあるアラブ人ジャーナリストが真っ先に手を挙げ、事前にプリントアウトしたカイロ大学の声明文の全文を時間をかけて読み上げ、「この声明文についてどう思うか?」と訊いてきたのだ。
 声明文がエジプト大使館のフェイスブックにアップされたのが午後2時9分で、郷原氏と筆者の記者会見が始まったのは午後4時である。声明文のことは外部に特に告知されていなかったので、小池氏側から知らされない限り、そのような早いタイミングで声明に気づき、それをプリントアウトし、FCCJまで移動し、満を持して質問するということはまず考えられない。
 さらにそのアラブ人ジャーナリストは、質問でもないのに、わざわざ「小池氏には20年以上アラビア語で取材しているが、彼女のアラビア語は非常に上手く、発音もよく、アブダビで取材を受けたときは、30秒の予定に対し、5分間もアラビア語で話し続けた」と褒めたたえた。
 これがまったく事実に反することは、筆者やイスラム思想研究者でアラビア語通訳の飯山陽氏がチェックした小池氏のインタビュー動画を見れば一目瞭然で、飯山氏は「小池氏のアラビア語は2歳児レベル」と断じている。


 ◆ 助太刀を試みるアラビア語通訳者
 筆者は2016年から小池氏の学歴詐称疑惑を調査し、各種の記事で明らかにしてきたが、その過程で、小池氏を強引に擁護する中東・アラブ関係者に会ってきた。
 たとえば、筆者は、ベテランのエジプト人ジャーナリストと小池氏のインタビュー動画を見て、「小池氏のアラビア語は日本で6ヶ月程度やったレベルで、到底大学教育に耐えられない」と記事にした。するとあるアラビア語通訳者が、そうした評価は「幼稚、かつ杜撰」で、小池氏は「アラビア語を話せるというレベルは遥かに超えて」おり、「イントネーションはきわめて正しく」「アラブ人が感動」するものであると反論してきた。
 しかしこの通訳者は、小池氏関連の通訳を引き受け、金を稼いでいる「業者」で、過去、自身のツイッターで「小池閣下の当選を祈願して○○断ちをした」「閣下のアラビア語に疑問を呈する輩に、通訳者として閣下のアラビア語は素晴らしいと言ったら、けっ、おぼえていやがれと言って退散した」といったツイートをしていた人物だ。
 もし小池氏が本当に感動するほどのアラビア語ができるなら、事前のリハーサルなしできちんと正則アラビア語を喋っている動画をとうの昔に公開しているだろうし、都議会で上田令子都議(江戸川選挙区)から「カイロ大学入学から卒業までの経緯を正則アラビア語でこの場で話してくれれば、出し渋っている(卒業)証明書よりも明白に卒業を証明できる」と求められたのに対し、答弁拒否をすることもなかったはずだ。
 小池氏のアラビア語がお粗末であることは、すでに小池氏自身のこれまでの行動によって証明されている。


 ◆ 恩を売り、中東・アラブ関係者を自分の持ち駒にする
 嘘をついてでも小池氏を擁護し、小池氏の歓心を買おうとする中東・アラブ関係者がいるのは、小池氏が彼らに恩を売っているからだ。
 筆者が最近聞いた話では、西日本の大学で客員教授を務めていたカイロ大学出身のエジプト人が、任期満了で職を失うことになった際、ほとんど泣きつくような状態で、小池氏に直接連絡を取ったところ、「わたしに任せて」とすぐに関東のある私大に連絡し、教授職を確保したので、エジプト人教授はそれを大いに恩義に感じていると、筆者の友人に話したという。
 小池氏は、自分にとって利用価値がないと思った人間には、尊大で無礼な振る舞いをすることで知られており、筆者の知人にも不快な思いをさせられた人たちは少なくない。しかし、自分を助けてくれそうな中東・アラブ関係者には、恩を売って持ち駒にしている。権力者であれば、上記のような職の斡旋、ジャーナリストには日本の有力政治家へのインタビューの仲介、通訳者には通訳の仕事の紹介、日本政府からの研究費獲得の後押し、日本政府からの叙勲への後押し等、色々なことができる。
 厄介なのは、アラビア語や中東関係は一般の日本人には馴染みのない分野で、小池氏の息のかかった人物が嘘をついても見分けることができず、ころっと騙されてしまうことだ。
 特に彼らはアラブ流で大きく出てくる、すなわち嘘をつくときは大きな嘘をつくので、そうした文化に馴染みがない日本人は戸惑う。これの最たるものが、首席でカイロ大学を卒業したという小池氏の嘘で、さすがにこれは2020年3月の都議会で、自民党の三宅正彦都議(島部選挙区)が小池氏を問い詰め、「それでは首席ではなかったということで確定させて頂きます」と引導を渡した。


 ◆ 小池氏が、頻繁にカイロに足を運び、カイロ大学や日本語学科と親密な関係を作ってきた第一の目的は、今回のように学歴詐称疑惑が取りざたされたとき、助けてもらうためだろう。事実、サーレハ氏は、小池氏の後ろ盾となって、日本のメディア対応を行ってきた。


 ◆ 小島敏郎氏と日本の大手メディアに期待したいこと
 小島敏郎氏は、4月17日(水)にFCCJでの会見を予定している。
 小池氏の手の内を知り、弁護士の資格も持つ小島氏の会見は、郷原氏と筆者の会見以上に小池氏にとって脅威だろう。同氏は、東大法学部時代に司法試験の他、国家公務員上級試験(法律職)に3番で合格し、大蔵省(現・財務省)にも勧誘されたが、環境行政を志し、できて間もない環境庁(現・環境省)に入ったという気骨のある人物だ。FCCJでの会見では、小池氏の持ち駒の人物などが、会見を混乱させようとする可能性もあるので、十分注意してもらいたいと思う。
 本件は、都知事学歴詐称という大きな問題であり、告発者の北原百代氏は手紙、小島氏はメールという物証を持っているにもかかわらず、文藝春秋以外の大手メディア(テレビ局、新聞社)の動きはきわめて鈍い。
 小池氏や小島氏の会見などは多少報道したものの、突っ込んだ内容でもなく、しかもずいぶん小池氏に忖度している。今まであまり取材をしてこなかったので、報道できる材料が少ないとか、莫大な広告費を払ってくれる東京都のトップに嫌われたくないといった理由があるのかもしれないが、本件をきちんと報道しなければ、自分たち自身の信頼を傷つけ、読者・視聴者離れに拍車をかけることを肝に銘じるべきだ。


 ◆ 小池氏の学歴詐称問題は、石井妙子氏の『女帝 小池百合子』をはじめとして、数多くの人々が調査をしたり、都議会で質問をしたりして、疑問点がかなり明確に絞られてきている。大手メディアには、それを記者会見などで、小池氏にしっかりと質問してもらいたい(主要な疑問点については今週月曜日に発表した〈告発者たちとカイロ大学の言い分は、なぜ真っ向から食い違うのか?〉に列挙した)。
 静岡県川勝平太知事に対しては、新聞社の若手記者らが厳しい質問を浴びせ、それが辞任の一つの原因になった。東京のメディアにも、是非頑張ってほしい。
 特に、小島氏が告発したカイロ大学の声明文に関し、伊東乾東大教授は〈「小池都知事学歴詐称問題」を別の角度で検証、大学の公文書とは何なのか〉(JBpress 2024年4月15日記事)の中で、カイロ大学の声明文は、形式や書かれている内容が基本メチャクチャなパチモンで、日本国内で、カイロはおろか国際的な大学実務とは無関係な人がものすごい急ピッチで捏造した「日本語の作文」を流布した可能性がきわめて高いと指摘している。これは重大な指摘であり、メディアには特にこの点を追及してもらいたいと思う。


 ◆ 本件で最も重要なこと
 疑惑解消のために、一番重要なことは、小池氏が、学業実態があったことを証明することだ。重大な疑義が呈されているのに、「卒業証書はある。カイロ大学も認めている」で逃げ切ろうとするのではまったくお話にならない。どうやって証明するかは小池氏が考えることで、それができなければ「クロ」ということだ。

 

イスラエル軍撤収後の病院で計300人近い遺体を発見 ガザ南部  2024.04.23

イスラエル軍撤収後の病院で計300人近い遺体を発見 ガザ南部
2024.04.23 CNN

 

パレスチナ自治区ガザ地区文民保護当局者は22日、イスラエル軍が今月7日に撤収した南部ハンユニスのナセル病院で、中庭の集団埋葬地から新たに73人の遺体が掘り出され、これまでの合計が283人に達したことを明らかにした。

ハンユニスの文民保護責任者がCNNとのインタビューで語ったところによると、一部の遺体は手足を縛られていた。生き埋めにされたのか先に殺害されたのかは不明で、大半の遺体が腐敗しているという。

発掘作業を指揮しているハンユニス文民保護当局の報道官はCNNに、400人が行方不明になっているとの情報があり、3日前から遺体の捜索を続けていると話した。


同病院周辺は1月から2月にかけ、イスラエル軍の激しい攻撃を受けた。CNN特派員らによると、死者の遺体を安全に墓地まで運ぶことができず、1月に遺族らが暫定的に病院敷地内に埋葬した。イスラエル軍の撤収後、その遺体がいったん掘り出され、少なくとも1カ所に集めて埋め直されていたことが分かった。イスラエル軍は遺体の中に人質が含まれていたかどうかを、DNA鑑定で確認したとみられる。

ある男性はCNNに、1月に死亡した息子の遺体を病院内に埋葬してあったが、今も見つからないままだと訴えた。

同時期に兄弟を亡くした別の男性は、2週間前から現場に通い、遺体を捜し続けているという。倒れたヤシの木を指して「遺体をあのわきに埋めたのに見つからない。イスラエル人が掘り出して場所を入れ替えた」と語った。

娘の遺体を10日前から捜していると話す女性もいた。

イスラエル軍は、ガザ地区から数十人の遺体をいったんイスラエル国内へ移し、DNA鑑定後に戻したことを認めている。

 

大阪 大東市長選 無所属の新人 逢坂伸子氏 初当選 2024/4/21

大阪 大東市長選 無所属の新人 逢坂伸子氏 初当選
2024/4/21 NHK

 

 

任期満了に伴う大阪・大東市市長選挙は、無所属の新人で、元大東市職員の逢坂伸子氏が、初めての当選を果たしました。


大東市長選挙の開票結果です。
逢坂伸子 無所属・新
当選
1万7204票
石垣直紀 大阪維新・新
1万4869票
松浦哲朗 無所属・新
5200票
12年ぶりの新人どうしの争いとなった大東市長選挙は、無所属の逢坂氏が、大阪維新の会の新人と共産党が推薦した無所属の新人を抑え、初めての当選を果たしました。
逢坂氏は56歳。
平成2年に大東市役所に入り、高齢介護室課長などを務めました。
逢坂氏は、「子どもたちも含めてまちづくりに一緒に取り組む。どんどん対話集会を開いて、住民に理解していただき、市政に口出しをしてもらいたい。みずからが市政に参加するということになるのでそうした大東市を目指したい」と話しています。

 

国と地方が「主従関係」だったらコロナ禍を乗り越えられたか? 保坂展人・世田谷区長が懸念を示す改正法案  2024年4月11日

国と地方が「主従関係」だったらコロナ禍を乗り越えられたか? 保坂展人・世田谷区長が懸念を示す改正法案


2024年4月11日 東京新聞

 

 

 岸田政権は、国と地方の関係を「主と従」に戻す恐れのある地方自治法改正案について、今国会での成立を目指している。「地域主権主義」に根差した政治や行政を目指す「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」(LIN-Net)の世話人を務める東京都世田谷区の保坂展人区長は「統制型の上意下達の国家、統治機構に変える考え方は危機的だ」と、改正案の内容に強い懸念を示している。(関口克己、山口哲人)


 「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」(LIN-Net) 2022年12月、東京都世田谷区の保坂展人区長、杉並区の岸本聡子区長、多摩市の阿部裕行市長、政治学者の中島岳志氏らを世話人として発足。政治分野のジェンダー平等を目指す「FIFTYS PROJECT(フィフティーズ プロジェクト)」の能條(のうじょう)桃子代表も世話人となっている。草の根からの政治や行政の実践を働きかける緩やかなネットワークで、街づくりや気候変動、多様性などの視点から幅広く地域主権を話し合う。地方議員や市民ら26都道府県の約300人が賛同人に名を連ねる。

 

◆非常事態に国が自治体を指示
 改正案は、政府が3月1日に閣議決定し、国会に提出した。現在の国の指示権は、災害対策基本法感染症法など、個別の法律に規定があれば発動が可能となっている。地方自治法改正案では、大規模災害や感染症のまん延など国民に重大な影響を及ぼす非常事態で、個別法に規定がなくても、生命保護に必要な措置の実施を国が自治体に指示できるようにする。
 日本弁護士連合会(日弁連)は、国と地方の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に改めた地方分権改革に逆行するとして、法案に反対する会長声明を発表した。政府は、地方制度調査会が現行法について「個別法の規定で想定されていない事態が生じた場合、国は自治体に指示ができない」と問題視した答申内容を基に、法改正の必要性を主張している。


◆「コロナ禍では国が自治体に追従」
 保坂氏は「国に補充的な指示を出せる権能があったら、コロナ禍を乗り越えられたのか」と首をかしげる新型コロナウイルスの流行初期、国は無症状の国民へのPCR検査に慎重だった。世田谷区は積極的な検査のための態勢を確保。国もその後、方針転換した。
 保坂氏は「自治体が一歩先んじ、国も追認し、知恵を出し合ったのがコロナ対策だった。混乱時に国が常に正しい判断をするとは限らない」と振り返り、「対等・協力」となったはずの地方分権の原則が、中央集権的な体制に逆戻りすると危機感を抱く。
 保坂氏は、岸田政権の現状について「次期戦闘機の輸出解禁のような重要な問題が、十分に議論されないまま進んでいる。自民党派閥の裏金事件も真相が見えない。この体質が国民の政治への失望を生み出している」と指摘。「情報を開示し、住民が参加するボトムアップの民主主義を再構築したい」と語る。

 

「3大映画祭制覇」濱口竜介語る"日本映画の課題" 国際的評価をされても大ヒットにつながらず  武井 保之

「3大映画祭制覇」濱口竜介語る"日本映画の課題"
国際的評価をされても大ヒットにつながらず
武井 保之

 

toyokeizai.net

 

濱口竜介 ドライブ・マイ・カー 悪は存在しない
濱口竜介監督(写真:本人提供)

『ドライブ・マイ・カー』(2021年)で「第74回カンヌ国際映画祭」の脚本賞を含む4冠を獲得。「第94回アカデミー賞」の国際長編映画賞も受賞し、その名を映画界以外にも広く知らしめた濱口竜介監督。

昨年は最新作『悪は存在しない』(4月26日公開)が「第80回ヴェネチア国際映画祭」銀獅子賞(審査員大賞)を受賞し、『偶然と想像』(2021年)の「第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞審査員グランプリ)受賞とあわせて、世界3大映画祭の主要賞を制覇した。

黒澤明監督以来の日本人映画監督としての快挙が国内で脚光を浴びる中で、世界からは日本を代表する映画監督として注目を集めるとともに、日本映画界の近年の充実ぶりも世界に示した。

そんな“時の人”に、『ドライブ・マイ・カー』(興収13.7億円)でも大ヒットにはならない日本映画界での商業的な成功に対する意識と、独立系映画の苦境、日本映画界の課題について聞いた。

ヴェネチア国際映画祭での受賞

――世界3大映画祭のうちの2つ、カンヌとベルリンで主要賞を受賞されたあとは、3つ目となるヴェネチアも狙っていたのでしょうか。

いえ、そんなことはないです。本作(『悪は存在しない』)がヴェネチアの(金獅子賞を争う)コンペ部門に出品が決まったときは驚きましたし、コンペティションに出すからには受賞の可能性はゼロではないのはもちろんですが、正直なところ、まさか受賞するとは思っていませんでしたね。

――映像作家として作品を作るうえで、世界3大映画祭での栄誉は目指すべきところなのでしょうか。

一概にそうは言えません。ただ、自分が作っているような独立系の映画は、日本の興行のメインストリームであるエンターテインメント大作とは異なります。

そういう小規模な予算の映画が観客の認知や関心を得ることは難しい現状があります。だから、映画祭で評価を受けることは確実にその一助になるとは思います。国際映画祭で話題にならないと職業としてやってはいけないだろうなと、30代前半くらいまでは漠然と思っていました。

世界の映画祭で受賞するためのテクニック

――世界の映画祭で受賞するためのテクニックや、作品の調整などはあるのでしょうか。

30代後半、実際に映画祭に選ばれるようになって、映画祭のプログラマーなどと話す機会を得ると、必ずしも映画祭への「選ばれやすさ」を想定して作品を調整するようなことがなくても、自分自身の価値基準や価値判断をそのまま先鋭化させて作っていけば、国際映画祭の基準にもかなう、ということがわかってきました。要は映画として磨いていくということに尽きます。

濱口竜介 ドライブ・マイ・カー 悪は存在しない
『悪は存在しない』(C)2023 NEOPA / Fictive

――“国際映画祭の基準”にかなうためには、何をやるべきなのでしょうか。

いろいろな映画が選ばれているので、これも一概には言えません。ただ自分のことで言えば、ある程度の数の映画を見て、映画史を学んだ、ということ以外には何もないような気がします。

古典的な映画をできるだけ見て、その美学を身につける。現代は制作条件が古典期とまったく違うわけなので、自分が学んだ映画というものの魅力をどうやったら発揮できるか。そういうことを考えたうえで、具体的な制作へと落とし込んでいく、ということが自分のやってきたことです。

国際映画祭のプログラマーたちと話してわかったことは、彼らは世界中の映画や歴史上の有名な古典は当然見ている、ということです。もちろん彼らはそこから外れたような新しいものも求めていますが、ある程度これまでの映画史を踏まえたものが出てきてほしい、という思いは共通して持っているように思いました。

なので、もし「どうやったら世界の映画祭に選ばれるのか」と問われたら、私個人の体験からは「まず古典映画をできるだけ見る。それで考える」という答えになります。

 

――世界3大映画祭などで評価される映画が、人気ドラマやアニメの実写化ばかりがヒットする日本の映画興行で、興収50億〜100億円ほどの商業的な大成功を収めることはほとんどありません。これを両立させるのは難しいのでしょうか。

難しいと思います。そもそも自分の場合は、日本で大きくヒットして商業的に成功することを期待して作っているわけではありません。そんなこと言っちゃいけないかもしれませんが(笑)。

ただ、「小規模な映画作り」と言っても、映画を作り続けるためには、ある程度の観客に認知されて、興行を成立させないといけないというプレッシャーはあります。

濱口竜介 ドライブ・マイ・カー 悪は存在しない
『悪は存在しない』(C)2023 NEOPA / Fictive

そういうなかで、国際映画祭に出すことになるわけですが、自分がいいと思う映画を作って日本で大ヒットさせるのは、かなりの離れ技になる気はしています。

日本映画界の長年の課題への思い

――それが両立しない、日本映画界の現状の課題をどう見ていますか?

たとえばフランスだと、アート系の映画でもかなりの観客が入るので、とてもうらやましい状況です。フランスでは小中高校と、映画が教育プログラムの中に組み込まれていることも大きいでしょう。日本では幅広い世代において、映画館に行くという習慣がどんどん薄れています。

是枝裕和監督の『怪物』は興収が20億円を超えたそうです。映画祭での受賞だけが要因ではないでしょうが、是枝さんのように着実にキャリアを重ねれば、国内でも毎作話題になり、関心が集まるということだとは思います。これは希望ですし、若い人が目指すところでもあるでしょう。

ただ一方、映画好きなコアファンの裾野はまったく広がっていない。そのことはミニシアターの窮状を伝え聞くとわかります。これをどう変えられるかと問われれば、基本的には変えられないと思います。

自分にできるのは映画制作を続けていくことぐらいです。あまり期待しすぎずに、続けられる範囲で作り続けていく、ということに尽きます。

 

是枝監督が内閣府「新しい資本主義実現会議」に出席。映画業界の課題と解決案を提言し、官民連携の可能性を議論

是枝監督が内閣府「新しい資本主義実現会議」に出席。映画業界の課題と解決案を提言し、官民連携の可能性を議論

branc.jp


4月17日(水)に総理官邸で開催された「第26回新しい資本主義実現会議(議題:官民連携によるコンテンツ産業活性化戦略 )」に是枝裕和監督が出席し、日本における映画業界の問題点と課題解決のための提言をした。

是枝監督は自身の経験に基づき、日本の映画の文化・産業の問題点や可能性について述べ、政府に対して内閣府の知的財産戦略推進事務局の下に映画文化・産業の施策を一本化して統括する部署の設立を訴えた。

まず、海外でとられている労働環境の改善に向けた制度と日本の現状を比較し、若いスタッフが安心して制作に取り組むためにも、国際ルールに見合ったものへ見直し、そしてそのルールが適用される映画の範囲を広げることが急務だと話した。それに伴って課題となる制作費の仕組みやハラスメント問題についても、改善の見込みが立たない現状を改めて指摘した。


さらに映像作品の流通について、国内では特に地方のミニシアターが存続の危機に面していることを強調し、助成金を出すなど、映画文化を国が守っていく態度を示してほしいと訴えた。国外においては、「映画祭のマーケットにお金をかけていないこと」、「国産のセールスエージェントがいないこと」とそれによる金銭的な損失を挙げた。

加えて、映画制作に関する教育システムの問題も挙げられた。国立の映画学校がある国もあるが、日本では映画を専門的に学べる学校が少なく、数ある学校でもできることが限られている。また、海外の映画学校で学ぶにしても膨大な学費がかかるため、支援するシステムを構築するべきと指摘。海外との懸け橋になる人材を作るためにも必要だと主張した。



そして制作の問題点には、相対的に見て「開発費が出ないこと」「ギャラが安いこと」「成功報酬がないこと」が挙げられた。是枝監督が代表を務めるaction4cinemaの活動にも言及し、国際共同製作や海外作品のロケ誘致など、対外的な関わりを持つための積極的な対策を求めた。




是枝裕和監督コメント
内閣官房からのヒアリングの依頼に答える形で、映画を取り巻く現在の問題点とその解決へのビジョンを自分なりに提言しました。出席されていた他の委員の方がとても正確に、多角的に映画界の問題点を捉えられているのがわかり、少し、安心しました。会議で配布した資料を共有させて頂きます。ちょっと長いですが、全文お読みいただけると、私たちがどのような改革を目指しているのか、ご理解いただけるのではないか?と思います。

 

■第26回新しい資本主義実現会議への映画文化・産業に関する提言の資料全文はこちらから

 

「どんな苦境においても生きることには意味がある」 ヴィクトール・E・フランクル

【こころの時代 宗教・人生】4月21日(日)から始まる新シリーズ
こころの時代 「ヴィクトール・フランクル


【放送】[Eテレ] 毎月第3日曜日(全6回)午前5:00 ~


80年前、600万のユダヤ人の命を奪ったホロコーストを生き延びた精神科医、ヴィクトール・E・フランクル(1905~1997)。戦後、強制収容所の体験記『夜と霧』で世界的に有名になりましたが、フランクルが伝えたかったのは「どんな苦境においても生きることには意味がある」というメッセージでした。
フランクルはなぜ、数えきれないほどの苦難を経験してもなお、人生を肯定できたのか。今シリーズでは、全6回にわたり、フランクルが遺した膨大な著作や資料を通じて、『夜と霧』だけではないフランクルの生涯と思想に迫ります。そして、争いや生きづらさが蔓延する現代で、私たちが苦悩を乗り越え、より広い世界に目を向けて生きる手がかりを探ります。
4月21日(日) 第1回:「日曜生まれの子」その光と影 
5月19日(日) 第2回:苦悩を生き抜く
6月16日(日) 第3回:豊かさの中の「空虚」
7月21日(日) 第4回:人生という「砂時計」
8月18日(日) 第5回:「何か」に支えられて
9月15日(日) 第6回:人生の中の出逢い
【出演】勝田芽生(日本ロゴセラピスト協会会長),小野正嗣(作家)
【朗読】井上二郎


全6回のナレーションを俳優・門脇麦さんが担当!
【ナレーション】門脇麦
【コメント】
最初お話をいただいたとき、「私ではないほうがいいと思います」と言いました。まだまだ人生ひよっこの私が、人生の話をする番組のナレーションをやらせていただくのは早い気がして。でも「夜と霧」は人生の座右の書と話してきましたし、思いは人一倍あると思うので、責任をもってお届けできるように頑張ろうと思います。
「夜と霧」のことだけでなく、フランクルの生い立ちであったり、他の書で残されている哲学的な言葉が散りばめられている番組です。解釈も深まると思いますし、これを自分の中に咀嚼したときにどういう言葉になるのか、ヒントがとてもたくさんあるように思います。私自身も、全6回が楽しみです。いろんなことを考えたり、何かに思いを馳せる時間って意外と日常生活で少なかったりするので、皆さんもこの番組を通して、そういう大切な時間を設けていただけたらと思います。
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こころの時代~宗教・人生~
https://www.nhk.jp/p/ts/X83KJR6973/
放送
[Eテレ] 毎週日曜 午前5時
再放送
[Eテレ] 毎週土曜 午後1時