2024年2月7日 宮崎日日新聞
◆リスクの大きさ再認識せよ◆
能登半島地震は、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)に大きな影響を与えた。深刻な事態には至らなかったが、原発が持つリスクを改めて示した。他の原発でも考慮すべき教訓が多く、真摯(しんし)に受け止め、脱原発に向かうきっかけとするべきだ。
地震では能登半島北側の沿岸部の断層が150キロ程度にわたって動いたとみられている。志賀原発2号機が新たな規制基準に適合しているかを確かめる審査では、周辺にある断層の動きをどう想定するかが重要な論点だ。北陸電力の想定では敷地周辺にある断層の多くが連動する可能性は低いとして、最大の想定は96キロとなっている。「過小評価ではないか」との指摘が出るのは当然だ。
また、今回の地震で志賀原発では変圧器が故障し、外部電源の一部系統が使えなくなるなどトラブルが多発した。これに加え、大規模な土地の隆起が原発の運転に与える影響についてもこれまで十分に検討されてこなかった。万一、原発の敷地内で数メートルもの隆起が発生したら、原子炉構造物や配管に大きな影響を与える可能性が高く、海からの冷却水の採取ができなくなることも考えられる。
現在の原子力災害対策指針の欠陥も露呈させた。道路は寸断され、孤立する地域が多発。多くの被災地で通信が途絶し、放射線監視装置(モニタリングポスト)の一部に影響が出た。
指針では、放射線量などによっては屋内退避をするとされているが、今回のように家屋の倒壊が相次いだら不可能だ。
九州電力玄海原発などの事故時には船による避難も想定されているが、今回は地震による隆起もあって、多くの港が機能しなくなった。能登半島地震が原発や避難ルートに与えた影響はまだ詳しく分かっていない。
地震の教訓とそれを基にした対策が明らかになるまで、拙速な原発再稼働は避けるべきだ。住民の不安は大きいのだから、立地自治体の長には慎重な対応が求められる。
いつになるか分からない再稼働に向けて多大な資金をつぎ込み続ける事業者の姿勢の合理性も問われなければならない。その資金と労力を再生可能エネルギー開発に向ける方が、はるかに効率的かつ早期の温室効果ガスの排出削減につながる。
政府が旗振りをしても再稼働は進まず「2030年度の電力の20~22%を原発で供給する」という今のエネルギー基本計画の目標達成はほぼ不可能だ。
間もなく始まる基本計画の見直し作業では、原発の現実と地震国日本の原発が抱える大きなリスクを正面から受け止め、依存度を低減し、脱原発を目指す方針を明確にするべきだ。