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<社説>原発60年超運転 乱暴な変更認められぬ

<社説>原発60年超運転 乱暴な変更認められぬ

2022/11/30 北海道新聞

 

 東京電力福島第1原発事故を教訓に国が国民と約束した「原則40年、最長60年」の運転期間ルールを骨抜きにする乱暴な変更だ。

 経済産業省原発活用の行動計画案を示し、原子力規制委員会の再稼働審査などで停止した期間を除外して運転延長できるとした。

 長期化する北海道電力泊原発の審査は10年目だ。北電の説明不備が主な原因とされるが、これだと運転期間は70年を超えかねない。

 現行の原子炉等規制法では40年を超える運転には規制委の認可が必要だ。行動計画案ではこれに加え、経産省が電力安定供給や防災対策面から認定するという。

 安全審査は福島事故後に経産省原子力安全・保安院から独立性の高い規制委に移った。再び経産省が主導権を握るかのごとき一方的な原発回帰は認められない。

 行動計画は政府のグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議で来月決定を図るという。

 岸田文雄首相が8月、唐突に「原発の最大限活用」を打ち出してから3カ月しかたっていない。

 GXは脱炭素化実現が主眼だ。それがロシアのウクライナ侵攻や原油高による電力逼迫(ひっぱく)で原発復活を前面に出し、再生可能エネルギーは脇に追いやるかのようだ。

 行動計画案には廃炉後の次世代型への建て替え、立地地域振興、人材育成も盛り込まれた。福島事故前に逆戻りした印象を受ける。

 運転期間の原則40年ルールは事故後に法制化された。原子炉容器の劣化防止だけでなく、期限がきたら廃炉にすることで依存度を減らす意義があった。

 計画案を審議した経産省の小委員会では当初、期間の上限撤廃まで踏み込んでいたが、国民の反発に配慮し修正したという。

 とはいえ今、審査期間を運転年数から除外しても直近の需給情勢に影響はない。泊審査は北電の説明だけで来年9月までかかる。

 電力危機対応というより原発主力化の地ならしではないか。規制委に圧力をかける意図もにじむ。

 経済界や与党の一部からは「審査が長すぎる」との声も出る。だが本来は審査期限を設定し、電力会社が安全性を証明できなければ再稼働を認めないのが筋だろう。

 停止中も維持管理に累計6千億円超を計上し安全対策費も膨らむ北電の経営は危うさが否めない。

 行動計画案では裁判所の仮処分命令による停止期間も運転年数から除外するという。上級審で取り消された場合のみとするが、司法軽視といえる姿勢は問題だ。