ippo2011

心のたねを言の葉として

他愛もない夢に胸を膨らませ、春を待つ小鳥の思い

八千草薫さん「あんな時代でも中学入学前は、その年頃の娘らしく制服はどこの学校がステキだとか他愛もない夢に胸を膨らませ、春を待つ小鳥の思いでした。けれど戦争は私たちの夢をはぎ取っていきました。私たちは戦争のどんな部分に使われるのか分からない機械の部品を作る工場に通う日々。今考えると恥ずかしくなりますが、ろくな物を食べていない私たちの頭の中は湯気の立つ、白く輝くご飯でいっぱい。実際に出されたのは、ご飯粒がほんの少しだけついた大豆。今の飽食の時代でも私はご飯にどうしても特別の思いがあって、大好きで。礼拝は禁止になり、戸棚の奥にしまい込んだ聖書も賛美歌集も戦災に遭った我が家と一緒に焼かれてしまいました。大きな震災とか何かある度、否応なしに戦争のことを思い出さずにはいられません」

(母校の聖泉高等女学校、現在のプール学院の朗読会で。俳優の八千草薫さん、1931年1月6日~ 2019年10月24日、88歳没)