2024年4月28日 NHK
日銀が大規模緩和策の一環として買い入れてきた「ETF=上場投資信託」。ことし3月の政策転換で新たな買い入れは行われなくなったが、保有額は時価で74兆円にのぼると推計されている。
世界の中央銀行の中でも異例の政策が残した課題がその出口戦略だ。いまは巨額の“埋蔵金”とも言われるが、ETFの扱いをどうするか、市場だけでなく政界も注目する。
(経済部記者 真方健太朗)なぜETFの買い入れ増えた?時価74兆円
買い入れ額は4500億円程度に制限。
その後、買い入れ額の上限は増えたが、あくまでも時限的な措置として、過度にリスクを恐れていた投資家や企業を後押しするのがねらいだった。
しかし、大規模な金融緩和策を掲げる黒田総裁が就任すると状況は一変。
ETFの購入は恒常的な政策に変わっていった。
“黒田バズーカ”の1つに位置づけられ購入の上限の拡大が続いた。
2013年に上限は年間1兆円と倍以上に引き上げられ、翌年には3兆円、2016年には6兆円、そして2020年には、新型コロナの影響を受けて年間12兆円にまで広がった。
結局、ETFはことし3月末の時点の簿価で37兆円、時価で74兆円まで積み上がったが、危惧されていた買い入れの恒常化で市場をゆがめ、リスク資産を膨らませることにつながったという批判は多い。
活用策【1】 希望する国民に販売する
一方、足もとではETFは大幅な含み益の状態で、74兆円にものぼる資産の活用が注目されている。
希望する国民に割安で販売するという案もある。
民間のシンクタンクによると、過去に香港の金融当局が行った「出口戦略」の事例があるという。
1998年、アジア通貨危機をきっかけに投機筋に大量の株や通貨を売られたことに対抗して、香港の金融当局は10営業日で当時のレートでおよそ2兆円余りの株を購入する市場介入を行った。
香港の金融当局は、この政策の出口戦略として、まずは第三者機関を設立して中立的な立場で株の管理や情報開示を行った。
そして翌年にはETFの購入を希望する国民や機関投資家に割安で販売し、長期保有を促した。
株価急落など市場の大きな混乱もなく、ETFを売却できたこの事例は、日本でも参考になる可能性があると専門家は指摘している。活用策【2】 政府が買い取って財源に
活用策【3】 市場で売却
もちろん、日銀がすぐにETFを市場で売却することもできる。
大きな含み益を抱えた今、株が売却できれば、その売却益が国庫ひいては国民に還元されることになる。
ただし、一気に大量の株を売却すれば株価が大きく下がってしまい、市場を混乱させるリスクがある。
実は日銀は、過去に金融機関から買った株を今でも年間3000億円程度売却している。
この程度の金額なら市場に悪影響を及ぼさないとみられるが、74兆円分すべてを売却するのに240年余りの途方もない時間がかかる計算となり、現実的ではないという指摘もある。日銀はいつ動くか
日銀のETF買い入れをテーマに調査を行う専門家は、国民的な議論が重要だと指摘している。
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