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青森県六ヶ所村の巨大施設、核燃料サイクルの現場…貯蔵プールはすでに満杯 2023/08/24

青森県六ヶ所村の巨大施設、核燃料サイクルの現場…貯蔵プールはすでに満杯
2023/08/24 読売新聞

高レベル廃棄物の「ガラス固化体」、ステンレス容器で保管

 高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターでは、緑色の床にオレンジ色の円形の蓋が整然と並んでいた。蓋の下には、使用済み核燃料から分離され、再利用できない核分裂生成物を取り出した高レベル放射性廃棄物の「ガラス固化体」が垂直に連なって保管されている。

高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの内部。オレンジ色の円形の蓋の下にガラス固化体が保管されている
高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの内部。オレンジ色の円形の蓋の下にガラス固化体が保管されている

 高レベル放射性廃液とガラスを溶かして固めたガラス固化体は、キャニスターと呼ばれるステンレス容器に入っている。熱を発するため常時、外の空気で冷やしている。貯蔵容量2880本に対し、これまでに英仏に送った使用済み核燃料を処理して返還された1830本を受け入れた。

 問題は、最終処分場が決まっていないことだ。青森県との「約束」で、最長50年で県外に搬出することになっている。最初の期限は2045年。それまでに最終処分場を稼働させなければならない。北海道 寿都すっつ 町、 神恵内かもえない 村が選定に向けた文献調査に入ったものの、決定までの道のりは長く、先行きは見通せない。

 一方、全国の原発から集められた低レベル放射性廃棄物については、1、2号埋設センターに続いて、3号の工事が行われていた。周囲ではウグイスが鳴き、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターとは対照的にのどかな感じさえした。操業開始から約30年で、200リットルの黄色いドラム缶約35万本を受け入れ、最終規模300万本の約1割が埋まった。満杯になれば、覆土して継続的に監視する状態となる。

原子力政策の柱の核燃料サイクル施設

 核燃料サイクル施設は、標高約55メートル、海岸から約5キロに位置する。津波の心配はないが、原子力規制委員会の新規制基準により、最大風速100メートル毎秒の竜巻を想定し、飛来物から冷却装置を守るために鋼鉄製の防護ネットを設置するなど、自然災害や火災の対策が行われた。

竜巻による飛来物を想定し、鋼鉄製の防護ネットで覆われた冷却装置
竜巻による飛来物を想定し、鋼鉄製の防護ネットで覆われた冷却装置

 日本原燃によると、使用済み核燃料の再利用により、ウラン資源が節約され、高レベル放射性廃棄物の体積は直接処分に比べて4分の1になる。また、放射能が天然ウラン並みのレベルまで減衰する時間は、約10万年から約8000年になるという。

 前身の日本原燃サービス発足から43年。六ヶ所村出身の報道第一グループリーダーの橋本 篤哉あつや さん(55)は、「昔は反対する住民も多かったんですが、今では理解が進み、地域と共存しています。現在、従業員の約64%は青森県出身者です」と話した。

 ウクライナ危機でエネルギーの安定供給が世界的に危ぶまれている。エネルギー資源の乏しい日本にとって、原発政策を推進する以上、それを支える両輪の一つである核燃料サイクルを進めるべきだろう。