政倫審と予算案 不信は膨らむばかりだ
2024年3月2日 北海道新聞
自民党派閥の裏金事件を受けた衆院政治倫理審査会(政倫審)は2日目の審査で、安倍派の元幹部4人が出席した。
最大の焦点は、裏金づくりはいつ誰が何の目的で始め、どのように継続し、何に使ったかだったが、新たな証言は出なかった。
2022年にいったん廃止を決めた派閥の資金還流を安倍晋三元首相の死去後に復活させた経緯についても、違法性の認識はなかったとの答弁が相次いだ。
座長や事務総長を務めた最高幹部が、いずれも組織的な裏金不正への関与を否定した。それでは一体だれが意思決定をしていたのか。疑念は募るばかりだ。
実態が解明されなければ、再発防止策もままならない。追及をかわしてばかりの逃げの姿勢が、国民の不信感をかえって増幅させていることを自覚すべきだ。
自民党が新年度予算案の採決を強行し、これで幕引きと考えるなら大間違いである。国会には、参考人招致や証人喚問を含め、真相究明を続ける責務がある。
安倍派の事務総長を務めた西村康稔前経済産業相は、資金還流について「歴代会長と事務局長の間で長年慣行的に扱ってきた」と述べ、自身の関与を否定した。
だが、派閥ぐるみの億単位に上る巨額の不正である。事務方だけの判断でできるはずはなく、何らかの意図を持って、政治家が関与したと考えるのが自然だろう。
そうした疑惑の全てを、亡くなった安倍氏ら歴代会長に押しつけるのは無責任ではないか。
事務総長だった松野博一前官房長官や座長だった塩谷立元文部科学相は、資金還流が20年以上続く慣行だった可能性に触れた。
派閥の元会長で、いまだ安倍派に強い影響力を持つ森喜朗元首相を国会に呼び、過去の経緯を含めて話を聞くべきだ。
今回の出席者だけで事実解明できないのであれば、さらに多くの証言を積み重ねるのが筋だろう。
自民党の小野寺五典衆院予算委員長は、政倫審が終わらないうちに予算案の採決を職権で決めた。
裏金の解明が全く進まない乏しい審理状況であっても、政倫審はとりあえず開催さえすればいいと言わんばかりの姿勢だ。
予算委員会は、政治とカネの問題に時間を取られ、予算案自体の実質的な審議は停滞している。
国民不信を無視した採決強行は、民主主義の否定につながる。自民党は国民の怒りに真摯(しんし)に向き合わねばならない。