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EV充電器の低価格品に優先補助 経産省、設置拡大狙う  2024年2月18日 

EV充電器の低価格品に優先補助 経産省、設置拡大狙う

2024年2月18日  日本経済新聞

 

 

経済産業省は電気自動車(EV)向けの充電設備を補助する際に機器の価格を考慮に入れる審査制を採用する。低価格の充電器の申請を優先して補助する。メーカーや機器の販売事業者の競争を促して設置コストを抑え、充電器の台数を増やすことで、米欧に遅れるEVの普及につなげる。

高速道路やガソリンスタンド向けの急速充電器、マンション・旅館などに備える普通充電器を対象に設置費用の半額から全額を支援する。

2024年に総額360億円の予算を確保し、3月中旬から正式に募集を始める。審査制にする方針をメーカーなどに伝え始めた。

補助の採択先はこれまで原則として申請順で決めていた。補助金の支給を見込み、機器や工事の費用を十分に比較検討せずに申請する設置者もいた。価格による競争が働きにくく、割高な充電器が導入される場合もあったという。

出力1キロワットあたりの機器や工事費が安価な申請を優先することで、充電器メーカー、販売事業者、設置を検討する企業・団体にコスト意識を持ってもらい、競争を促す狙いがある。導入コストを下げ、将来は補助金がなくても商機のある市場になるよう目指す。

 

経産省はこうしたEV充電器の導入支援を22年に始め、これまでに240億円分の補助金を出した。パナソニックホールディングスや日立製作所ニチコンの充電器など、補助対象の形式を指定してきた。

今回の募集でもパナソニックなどの機器を指定することで、販売事業者からの割安な提案を優先しても、消費者が充電する際の一定の性能は維持できるとみている。

審査制は23年夏に先行的に取り入れた。その際にはマンションなどの普通充電器の1キロワット当たりの申請額が平均15万円となり、通常の募集よりも3万円程度下がったという。

日本はEVの普及が遅れている。調査会社のマークラインズによると、22年のEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の販売数は9万台で、新車販売に占める割合は2%にとどまった。米国はおよそ100万台で7%、ドイツは81万台で28%だった。

背景にあるのが充電器の少なさだ。EV充電器の国内の足元の設置数は約3万基にとどまる。EVやPHVの22年までの累計販売台数が1410万台と圧倒的に多い中国では、充電器がおよそ176万基、設置されていた。米国は13万基、ドイツは8万基程度だった。

 

経産省はもともとは30年までに足元の5倍の15万基にする目標を掲げていたが、現在は30万口に変更した。充電器には複数のコンセントの口数が付いているものがあるため、口単位に変えたという。

機器を導入しても老朽化などを理由に撤去する事業者もおり、設置箇所は順調に増えていない。

経産省補助金の要件でも充電器が広がるような仕組みを取り入れている。

補助する急速充電器は出力が50キロワット以上の充電効率が良いタイプに限定する。普通充電器はマンションの場合で1申請当たり20口まで、旅館やショッピングモールなどは2口までとして、より多くの事業者を採択するようにする。

EVはガソリン車の給油よりも一度の充電による航続距離が短いものが多い。充電網が整っていないと、充電切れを懸念する消費者がEVの購入に踏み切りにくい。

欧州で一部、ガソリン車への揺り戻しだと指摘される動きもみられるが脱炭素に向けてEVを増やすのは世界の潮流だ。

日本は自動車の電動化の目標にハイブリッド車を含めていることもあり、EVの普及が進んでいない。割安な機器の優先補助や、多くの場所に設置する補助要件などでEVを使いやすい環境を早期に整える。