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心のたねを言の葉として

2024年能登半島地震の緊急調査報告(海岸の隆起調査)

第四報 2024年能登半島地震の緊急調査報告(海岸の隆起調査)

活断層・火山研究部門 宍倉正展・行谷佑一
株式会社環境地質 越後智雄

 1月8日に能登半島北西部の海岸で行った2024年能登半島地震に伴う海岸の地殻変動調査の結果を報告する。調査は国土地理院(2024)による測地観測データの解析によって最大4 m程度の隆起が報告されている領域内の石川県輪島市門前町鹿磯かいそ周辺で実施した(図1)。まず鹿磯漁港では防潮堤壁面に固着したカキやカンザシゴカイ類などの生物が隆起によって離水した様子を観察した(写真1)。地震前のおおよその海面位置を示す固着生物の上限高度について、光波測距儀を用いて地震後の海面(2024年1月8日12:03の時間海面で、ほぼ平均海面の高度と一致)からの高度を複数地点で計測したところ、3.8〜3.9 mであり、同地点ですでに石山ほか(2024)が報告している値とほぼ同じである。
 鹿磯漁港より北側では写真2に見られるように波食棚と呼ばれる平坦な岩棚が、地震による隆起で干上がった様子が観察された。波食棚は岩盤の風化と波の侵食によって形成され、本来はおおよそ平均海面付近の高さに広がる地形である。また写真3のように波食棚の前面は崖になっており、地震後の海面(2024年1月8日14:20の時間海面で、ほぼ平均海面の高度)との高さの差は約3.6 mにおよぶ。現地では光波測距儀を用いて地形断面測量を行ったところ、図2に示すように段の地形がわかり、いわゆる海成段丘が形成されたことがわかる。第2報で解説したように、能登半島北部沿岸にはおよそ6千年前以降に形成されたと考えられる3段の海成段丘(高位からL1面〜L3面と呼ぶ)が分布しており、過去に海成段丘を形成するような大きな隆起が少なくとも3回起きていたことを示している(宍倉ほか, 2020)。すなわち今回の地震に伴う隆起よってL4面と呼ぶべき4段目の海成段丘が形成されたことになる。

図1 調査地点の位置(地理院地図に加筆)

図1 調査地点の位置(地理院地図に加筆)

写真1 鹿磯漁港の防潮堤に固着した生物遺骸が示す隆起の様子。人が持っている標尺の長さは5 m。

写真1 鹿磯漁港の防潮堤に固着した生物遺骸が示す隆起の様子。人が持っている標尺の長さは5 m

 

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