現地に行く意味 斎藤美奈子
本音のコラム 2024/1/10 東京新聞
阪神・淡路大震災(1995年1月17日)の際初動が遅いと批判されたと子当時の村山富市首相はそれでも発災2日後の19日には現地に入った。
新潟中越地震(2004年10月23日)の際、小泉純一郎首相が現地に視察に入ったのは発災3日後の26日である。
東日本大震災(11年3月11日)の際には菅直首相が周囲の反対を押し切る形で翌12日に福島に飛び、福島第1原発に乗り込んだ後、東北一円を空から視察した。
熊本地震(16年4月14日)の際、安倍晋三首相が現地視察に入ったのは9日後の23日。予定の16日に、より大きい本震が来たためだった。能登半島地震の発生から10日。岸田首相はやっと13日に現地に行く方向という。交通の難があったにせよ遅すぎる。
政治家、特に首相の被災地訪問については以前から議論があった。主な反対論は「被災地の負担になる」というものだ。部下や警備を引き連れて押しかけられても迷惑なだけ! しかし災害の現場も見ず、被災者の声も聞かずにどうやって救済ができるのか。政治家の視察が邪魔なのは、政治家側が視察を平時の大名旅行と同等に考え、受け入れ側が視察を接待と考えているからだろう。
独断で現地に入った国会議員を批判するなど本末転倒。最低限の随行人数で現地の悲鳴を最大限受け止めてきてよね、首相なら。 (文芸評論家)