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心のたねを言の葉として

「安倍派」元秘書らが語るパーティー券の怪しいさばき方 「“桜を見る会”とセットにして売っていた」 2023/12/15

「安倍派」元秘書らが語るパーティー券の怪しいさばき方 「“桜を見る会”とセットにして売っていた」

2023/12/15

 

 自民党の最大派閥「安倍派」(清和政策研究会、97人)が窮地に陥っている。政治資金パーティーの収入の一部を裏金化していたとみられる問題で、直近5年間で所属議員にキックバックした総額は約5億円に上る可能性がある。13日には、同派の宮沢博行防衛副大臣が「(政治資金収支報告書へ)記載しないでよいと派閥から指示があった」と暴露。派閥から“かん口令”が敷かれていることも明らかにした。果たして実際にはどうだったのか。安倍派議員の元秘書らがAERAdot.の取材に、パーティー券やキックバックの実態について赤裸々に語った。

*  *  *

「私の知っている限りのことをお話します」

 安倍派で閣僚経験のある国会議員の元秘書・A氏はこう打ち明ける。

「議員へのキックバックについては、事務所内でも、会計を担当する秘書と議員本人以外には公然の秘密のようになっていました」

 巨額の裏金キックバックの疑惑は、「安倍派5人衆」と呼ばれる松野博一官房長官西村康稔経済産業相萩生田光一政務調査会長、高木毅国会対策委員長世耕弘成参院幹事長ら幹部議員も直撃し、全員が役職を辞任する見込みだ。それ以外にも大半の議員がキックバックを受けていた可能性が指摘されている。なかには数千万円もの裏金を受け取っていた議員もいるとされるが、議員はキックバックの存在を知っていたのか。A氏は「100%、全部知っている」と断言する。

「約20年前から(キックバックを)やっていたというのだから、議員も当然知っているし、当たり前だと思っていた人もいたはずです。清和会では、一時期『もうこういうことは止めよう』という動きもあったようです。でも、一部の幹部議員がこれに反対したことで、今まで続いてきたと聞きました」

 

経団連の主要企業は慣れたもの

 A氏は、現役時代、安倍派の政治資金パーティーがあると1枚2万円のパーティー券を売りさばいてきた。パーティー券には通し番号が振ってあり、その番号でどこの事務所が誰に売ったかが把握できるようになっていた。パーティーに参加したい客は、自分の氏名とともに、その通し番号を記入して、口座に金額を振り込む手はずになっていたという。

「基本的に、安倍派は紙の振込用紙を使っていました。振込先の口座は安倍派の事務局だから、議員個人の事務所に直接お金が入ってくるわけではない。派閥の事務局にいったん金が集まることで、そこからキックバックされるというシステムが生まれたんです」

 安倍派の関係者は、パーティー券を売る際にこんな“裏技”を使ったと明かす。

「2万円のパーティー券をそれなりの枚数売るのは実は簡単ではないんです。だから『5枚以上買ってくれたら<桜を見る会>に1人ご招待します』とお願いして買ってもらったこともあります」

 あの「桜を見る会」までもが政治資金パーティーに利用されていたとは驚きである。

 A氏とは別の安倍派の国会議員の元秘書・B氏はパーティー券をさばく苦労をこう話す。

「定型サイズの封筒の中に、A4サイズのパーティーのお知らせのチラシを三つ折りにして、振込用紙と一緒に入れるんです。それを持って企業や団体の秘書室の政治担当にお願いしに行くのですが、経団連の主要企業は慣れたものですよ」

 

■2割引きで売って「無料招待」も

 B氏は、大手商社やメガバンクなど日本のトップ企業や団体を回ったという。

「収支報告書に名前が出ないのは10口20万円まで。そのため、10通の封筒を輪ゴムで束ねたものを10個くらいカバンの中に入れて回って、企業の担当者にお会いしたら、すぐに取り出せるようにしていました。たとえ10枚のパーティー券を企業や団体が引き受けてくれても、実際にパーティーに来るのは2人~5人くらい。特に中小企業相手には、私は5枚だと本来なら10万円のところを8万円にして2割引で売っていました。1人は『招待』で無料にしてお得感を出しあげるとよく買ってくれました」

 B氏も「キックバックは議員も知っていただろう」と話す。

「私も相当パー券を売りましたが、全体の管理は会計担当の秘書と議員本人がやっていました。安倍派が問題になっているのは、パー券の枚数が桁違いだからでしょう。検察が動くには金額のラインがあり、安倍派は金額が突出しているということ。5億円もの裏金となれば、レベルとしては、派閥解消ものじゃないですか」

 前出のA氏も今後の安倍派については、暗い表情でこう答えた。

「他の派閥の草刈り場になるんじゃないですかね。少なくとも、もうこの大勢力は保てないと思います」

 

■パーティー資金は若手議員の“餅代”に

 衆院議員を9期務め、郵政相、通産相などを歴任した深谷隆司自民党東京都連最高顧問は自身の経験をこう語る。

「私は渡辺派、その後に山崎派の顧問をしていたので、年末になるとパーティー券を500枚くらい引き受け、それだけで1000万円をつくっていました。それを払い込んだ上に、別に1000万円くらいを派閥の事務局に顧問として出していました。これらが、若手議員の“餅代”になるんですね。それがどんな形で若手に渡されるかは知りません。お金の流れについては、私は全て収支報告書に記載していました」

 そして、現在の安倍派の事態をこう嘆いた。

政治資金規正法に基づいて、きちんと記載すればよかったんです。安倍派にいくら入ったか、議員側にもいくら入れたか、両方で記載しておけば何の問題もなかった。それなのに、どこからナンボもらった、誰がナンボもらったというのは派閥の中でもいろいろあるので、内緒にしとけよということになったんだろうね。表に出ないようにするという無駄な配慮が墓穴を掘ることになったわけです」

 今回の裏金づくりはリクルート事件のような疑獄事件になるかもしれない、と指摘する識者もいる。13日に臨時国会が終わったが、東京地検特捜部はどこまで本腰を入れるのか。捜査のゆくえが注目される。

AERA dot.編集部・上田耕司)