是枝監督が内閣府「新しい資本主義実現会議」に出席。映画業界の課題と解決案を提言し、官民連携の可能性を議論
4月17日(水)に総理官邸で開催された「第26回新しい資本主義実現会議(議題:官民連携によるコンテンツ産業活性化戦略 )」に是枝裕和監督が出席し、日本における映画業界の問題点と課題解決のための提言をした。是枝監督は自身の経験に基づき、日本の映画の文化・産業の問題点や可能性について述べ、政府に対して内閣府の知的財産戦略推進事務局の下に映画文化・産業の施策を一本化して統括する部署の設立を訴えた。
まず、海外でとられている労働環境の改善に向けた制度と日本の現状を比較し、若いスタッフが安心して制作に取り組むためにも、国際ルールに見合ったものへ見直し、そしてそのルールが適用される映画の範囲を広げることが急務だと話した。それに伴って課題となる制作費の仕組みやハラスメント問題についても、改善の見込みが立たない現状を改めて指摘した。
さらに映像作品の流通について、国内では特に地方のミニシアターが存続の危機に面していることを強調し、助成金を出すなど、映画文化を国が守っていく態度を示してほしいと訴えた。国外においては、「映画祭のマーケットにお金をかけていないこと」、「国産のセールスエージェントがいないこと」とそれによる金銭的な損失を挙げた。加えて、映画制作に関する教育システムの問題も挙げられた。国立の映画学校がある国もあるが、日本では映画を専門的に学べる学校が少なく、数ある学校でもできることが限られている。また、海外の映画学校で学ぶにしても膨大な学費がかかるため、支援するシステムを構築するべきと指摘。海外との懸け橋になる人材を作るためにも必要だと主張した。
そして制作の問題点には、相対的に見て「開発費が出ないこと」「ギャラが安いこと」「成功報酬がないこと」が挙げられた。是枝監督が代表を務めるaction4cinemaの活動にも言及し、国際共同製作や海外作品のロケ誘致など、対外的な関わりを持つための積極的な対策を求めた。
是枝裕和監督コメント
内閣官房からのヒアリングの依頼に答える形で、映画を取り巻く現在の問題点とその解決へのビジョンを自分なりに提言しました。出席されていた他の委員の方がとても正確に、多角的に映画界の問題点を捉えられているのがわかり、少し、安心しました。会議で配布した資料を共有させて頂きます。ちょっと長いですが、全文お読みいただけると、私たちがどのような改革を目指しているのか、ご理解いただけるのではないか?と思います。
■第26回新しい資本主義実現会議への映画文化・産業に関する提言の資料全文はこちらから