ippo2011

心のたねを言の葉として

言葉

ただ生きる             谷川俊太郎

ただ生きる 谷川俊太郎 立てなくなってはじめて学ぶ立つことの複雑さ立つことの不思議重力のむごさ優しさ 支えられてはじめて気づく一歩の重み 一歩の喜び支えてくれる手のぬくみ独りではないと知る安らぎ ただ立っていることふるさとの星の上にただ歩くこと…

『花嫁』     石垣りん

『花嫁』 石垣りん 私がゆく公衆浴場は、湯の出るカランが十六しかない。そのうちのひとつぐらいはよくこわれているような、小ぶりで貧弱なお風呂だ。その晩もおそく、流し場の下手で中腰になってからだを洗っていると、見かけたことのない女性がそっと身を…

人間の罪に祈る        石牟礼道子

人間の罪に祈る 本来、日本人は、草にも樹木にも魚にも魂があると思っていた。私の周りの人たちは、そう思っています。人間だけが特別ではないと。水俣の漁師さんたちは、万物に魂があると思っています。信仰というか、帰依している。水俣の患者さんなんか、…

「夕焼け」  黒田三郎

「夕焼け」 黒田三郎 いてはならないところにいるようなこころのやましさそれはいつどうして僕のなかに宿ったのか色あせた夕焼け雲のように大都会の夕暮の電車の窓ごしに僕はただ黙して見る夕焼けた空昏れ残る梢灰色の建物の起伏影美しい影醜いものの美しい影

樹木希林の言葉  映画『あん』

樹木希林の言葉 映画『あん』(2017年 河瀨直美) どんな役でも同じ人間という体をしている以上は共通する部分が必ずある 施設にいる方にもお会いして、「こんにちは」と握手しようとすると指がない方もいました。でもみなさん、過去を乗り越えてとても…

円谷幸吉の言葉

父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。干し柿 もちも美味しうございました。敏雄兄姉上様 おすし美味しうございました。勝美兄姉上様 ブドウ酒 リンゴ美味しうございました。巌兄姉上様 しそめし 南ばんづけ美味しうございました。喜久造兄姉上様 …

春立つや身に副うは春兆の号ひとつ   花田春兆

さようなら、花田春兆さん(佐高信) 5月19日、花田さんの通夜に行ってきました。91歳だったんですね。「存命なのか、と気になっている俳人が二人いる。一人はホームレスの大石太であり、もう一人は脳性マヒの花田春兆(はなだしゅんちょう)である」200…

ごはんを食べてくれない息子に パパが一言!

【ごはんを食べてくれない息子に パパが一言! それからの食事が楽しくなった♪】 私には二人の息子がいます。長男(太郎)は3歳半次男(次郎)は1歳です。最近長男が『ごはん食べたくない!! たろう、おかし食べる!』と、ろくに食事をしないで間食ばかりし…

石原慎太郎の宿痾         関川宗英

石原慎太郎の宿痾 関川宗英 1 石原の差別発言 京都府警は2020年7月23日、ALSで在宅介護を受けていた京都市内の女性(当時51歳)に対し、女性からの依頼で薬物を投与のうえ殺害したとして、仙台市内などの医師2人を逮捕した。 石原慎太郎はこの事件について…

「入浴する智子と母」

響くシャッター音と水の音「ここが頂点だ」 ――智子さんとお母さんを撮影した写真は1972年の「ライフ」誌6月号に載り、世界に衝撃を与えました。「入浴する智子と母」はどのように撮影されましたか。 「智子ちゃんはお風呂が好きだと聞いていました。お母さん…

振り返らずに後ろを見るのと同じくらい、自分自身を見つめることは難しい。

ソローの言葉 It is as hard to see one’s self as to look backwards without turning around.振り返らずに後ろを見るのと同じくらい、自分自身を見つめることは難しい。One must maintain a little bit of summer, even in the middle of winter.人間は真…

「隠者の許由(きょゆう)と巣父(そうほ)」の話

「隠者の許由(きょゆう)と巣父(そうほ)」の話 (一) 中国古代の伝説上の帝王、尭(ぎょう)の時代のこと。高名な賢者にして隠者の許由(きょゆう)は、その人格の廉潔さは世に名高く、当時の尭帝がその噂を聞き許由(きょゆう)に国を禅譲(ぜんじょう…

R.E.M.  「Losing My Religion」

R.E.M. 「Losing My Religion」 Oh Life is bigger人生とは予測不能で面白い It's bigger than you,君が思ってる以上にね you are not me君は俺じゃない The lengths that I will go to俺の苦悩はこれからも続くんだろうな The distance in your eyes君の眼…

竹内好   主体性の欠如

竹内好 「ヨーロッパでは観念が現実と不調和(矛盾)になると(それはかならず矛盾する)、それを超えていこうとする方向で、つまり場の発展によって、調和を求める動きがおこる。そこで観念そのものが発展する。日本では、観念が現実と不調和になると(それ…

漱石の雅号

漱石の雅号 唐代の書物『蒙求』。李翰という人が書いた。古人の話を集めた子供向けの教本である。ここには漱石という夏目金之助の雅号の由来も入っている。 孫楚という詭弁家、「枕石漱流」と言うところを間違えて「漱石枕流」と言ってしまった。その間違い…

関東大震災 「朝鮮人が暴動を起こした」「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマ

関東大震災 「朝鮮人が暴動を起こした」「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマ (『民衆暴力 ――一揆・暴動・虐殺の日本近代』 藤野裕子 2020年 中公新書 p140) 流言の発生源をめぐって 1923年9月1日午前11時58分、南関東を中心に大規模な地震が発生した…

パラリンピックは中止を          関川宗秀

パラリンピックは中止を 関川宗秀 2021年も8月15日を迎える。今年は戦後76周年に当たる。 戦後日本にとって、「向上」とは、経済的な「成長」を指してきた。 「文化」よりも「経済」を重視して、あくせくして国づくりを進めてきた。 今の日本は、表面的には…

秋葉原事件とガンディー     中島岳志

秋葉原事件とガンディー 中島岳志 ダルマ~自分の果たすべき役割 トポス~ここに生きていて意味があると感じられるような場所 私はおそらく今の日本社会はこの「ダルマとトポス」を欠いてしまった世界であり、そのことが多くの問題を生み出していると考えて…

「100年かけてやる仕事」書評 ルーツを読み解く 土台の言葉

「100年かけてやる仕事」書評 ルーツを読み解く 土台の言葉 評者: 出口治明 / 朝⽇新聞掲載:2019年06月15日 100年かけてやる仕事 中世ラテン語の辞書を編む著者:小倉孝保出版社:プレジデント社ジャンル:言語・語学・辞典 ISBN: 9784833423151発売⽇…

宮崎、麻原、植松

宮崎、麻原、植松 『相模原に現れた世界の憂鬱な断面』 森達也 2020年 講談社現代新書 「なんだっけ。メディアの視点か。ずっと思っていることがある。宮崎が事件を起こしたあの時代がちょうど境目だったのかな。報道が加害者よりも被害者への取材にどんどん…

相模原事件とクメール・ルージュ

相模原事件とクメール・ルージュ 『相模原に現れた世界の憂鬱な断面』 森達也 2020年 講談社現代新書 「僕も違うと思います」と松本*はあっさりと言った。「強い憎しみを持って彼らを排除しようとしたというよりも、彼は彼なりに合理性を持って、あるいは社…

善はただ一つ。それは自分の良心に従って行動すること。

過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望を持つ。大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないようにすることである。善はただ一つ。それは自分の良心に従って行動すること。 ボ―ヴォワール

ALS嘱託殺人事件

ALS嘱託殺人事件 『相模原に現れた世界の憂鬱な断面』 森達也 2020年 講談社現代新書 2020年7月23日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に薬物を投与して死亡させたとして、京都府警捜査1課は2人の医師を嘱託殺人の疑いで逮捕した。学生時代に知り合って…

どのような状況でも人間は生きていくのだ        関川宗英

どのような状況でも人間は生きていくのだ 関川宗英 『ぼくの村は戦場だった』 (山本美香 2006年 マガジンハウス) 2000年3月、チェチェン。ディーマという少年が語る。彼のお母さんは庭に出たとき、ロシアの戦闘機から爆撃を受けた。お母さんは口から血を出…

ゴーマンさんが朗読した詩の全文   If we merge mercy with might, and might with right,

ゴーマンさんが朗読した詩の全文 アマンダ・ゴーマンさん(22)がバイデン米大統領の就任式で朗読した詩「The Hill We Climb」の全文は以下の通り。(CNNから) 2021/1/21 When day comes we ask ourselves, where can we find light in this never-ending s…

「それはスポットライトではない」   浅川マキ

「それはスポットライトではない」 浅川マキ もしも光が またおいらにあたるなら それをどんなに待っているさずっと前のことだけれど その光に気づいていたのだが 逃しただけさだけどふたたび いつの日にか あの光が おいらを照らすだろう あの光 そいつは古…

『遙かなノートル・ダム』 森有正 (1967年 筑摩書房)

『遙かなノートル・ダム』 森有正 (1967年 筑摩書房) 「霧の朝」 戦争を人間に対する悪であり、障害である、と公言している連中が、体験の切実さに、読者と共に参ってしまって、悪や障害から結局何かを吸い取り、体験が増大したのを(体験はどんなアホウの…

「既成事実への屈服」 丸山真男

「私の個人的意見は反対でありました」。日本が戦争に向かった経緯について、A級戦犯が東京裁判で語った言葉を政治学者の丸山真男が書き残している。 自らの考えを「私情」と排し、ひたすら周囲に従うのをモラルとするような指導者の言動を丸山は「既成事実…

隣人と分かち合う。ともに飢え、ともに祈る。ガンディーの姿が伝えたこと

いのちの政治学~コロナ後の世界を考える「隣人と分かち合う。ともに飢え、ともに祈る。ガンディーの姿が伝えたこと」 いのちの政治学~コロナ後の世界を考える「隣人と分かち合う。ともに飢え、ともに祈る。ガンディーの姿が伝えたこと」(前編) | 連載コ…

三島由紀夫「檄文」全文

三島由紀夫「檄文」全文 われわれ楯の会は、自衛隊によって育てられ、いわば自衛隊はわれわれの父でもあり、兄でもある。その恩義に報いるに、このような忘恩的行為に出たのは何故であるか。 かえりみれば、私は四年、学生は三年、隊内で準自衛官としての待…