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心のたねを言の葉として

風力先進国で行き詰まる再エネ事業 洋上風力は20㌔以上離すルールも 規制緩い日本に外資押し寄せる  2021年12月28日

風力先進国で行き詰まる再エネ事業 洋上風力は20㌔以上離すルールも 規制緩い日本に外資押し寄せる
2021年12月28日

www.chosyu-journal.jp

 

  政府が「地球温暖化をストップさせるため、CO2排出量を2050年までに実質ゼロにする」といって再エネ事業推進の旗を振り、それに乗って全国各地で風力発電やメガソーラー建設計画が目白押しとなっている。しかし目を世界に向けてみると、風力発電先進国といわれるドイツやデンマークなど諸外国では、低周波による健康被害や景観の破壊などに反対する住民運動が広がり、政府による規制も強まって、再エネ事業は頭打ちとなり、事業者は次々と撤退をよぎなくされている。日本ではほとんど報道されない風力発電先進国のこうした事情について、専門家に意見を聞き、どうなっているのか調べてみた。

 

 最近、下関市豊浦町沖に、1基当りの出力1万4000㌔㍗の巨大風車を合計34基建てる計画が持ち上がり、事業者であるRWEリニューアブルズ・ジャパン合同会社(ドイツの再エネ企業RWEの日本法人)が17~19日、地元の漁協組合員や住民に対する説明会をおこなった。

 

 そのなかで、この計画が沿岸から風車まで最短2㌔というきわめて近距離であることに対し、地元住民から「イギリスでは10㌔離す法律があると聞いた」という質問が出た。するとRWEのドイツ人担当者は「そんな法律はないし、そういうルールもない。離岸距離が2・5㌔というプロジェクトも実際にある」と答えた。また、風力発電低周波音を心配する質問に対しても、「低周波音についてはよくわからない部分があり、学術界でも議論が進められている最中だ。ただ、健康被害が出ているという実体がない。ドイツではクレームがないので測定データが集まっていない」とのべた。

 

 そこで洋上風力発電の沿岸からの距離について調べてみると、日本の電力中央研究所が2019年に公表した「再エネ海域利用法を考慮した洋上風力発電の利用対象海域に関する考察」という文書があった。

 

 それによると、欧州や中国では洋上風力発電の立地を促進する区域、または禁止する区域を決めるさい、立地を認める離岸距離を定めている【表①参照】。それを洋上風力の設備容量が多い国順(2018年時点)に見てみると、まずイギリスでは、2001年時点では実証実験としておこなったために離岸距離を定めず、そのため立地が沿岸部に集中して、住民による低周波音の健康被害や景観の破壊に反対する運動が起こった。そこで2003年に、沿岸から8~13㌔以上離すと定めた。さらに2012年には風車の大型化による健康被害や景観への影響を考慮して、沿岸から一二海里(22・2㌔)以上離すことが決められている。

 

 ドイツでは、連邦海運・水路庁による海洋空間計画において、離岸距離一二海里(22・2㌔)以上の海域を洋上風力発電の立地を促進する区域として指定している。

 

 また中国では、エネルギー部門を管轄する国家能源局と国家海洋局との調整の結果、洋上風力発電の設置には漁業や海上交通路の確保を考慮しつつ、離岸距離10㌔以上の海域に設置することを原則としている。

 

 さらに実際に洋上風力発電が沿岸からどのくらい離れた場所に建てられているかを調べてみた【グラフ②参照】。沿岸からの平均離岸距離は、稼働中のもので、イギリスは20㌔近く、ドイツは40㌔以上、オランダは20㌔以上などとなっている。建設中や計画段階のものは現状よりももっと陸地から離れた場所に設置する傾向が顕著で、イギリスでは平均して80㌔近く、ドイツでは60㌔以上となっている。欧州の海は遠浅だという条件があるものの、沿岸からわずか1~2㌔という、住宅地や病院、学校にきわめて近い場所に巨大洋上風力発電を建てるような計画が出ているのは、世界中で日本だけだ。