ippo2011

心のたねを言の葉として

俳句

百合の香の朝やはらかと思ひつつ

百合の香の朝やはらかと思ひつつ 小川美津子

秋めくや貝ばかりなる土産店

秋めくや貝ばかりなる土産店 久米正雄

今年また生きて残暑を嘆き合う

今年また生きて残暑を嘆き合う 池田澄子

ダリの絵のごとき街なり残暑なほ

ダリの絵のごとき街なり残暑なほ 熊岡俊子

泳ぐとはゆつくりと海纏ふこと

泳ぐとはゆつくりと海纏ふこと 大川ゆかり

八月のある日がらんと山の駅

八月のある日がらんと山の駅 勝又星津女

一本の白樺に秋立ちにけり

一本の白樺に秋立ちにけり 広渡敬雄

立秋と聞けば心も添ふ如く

立秋と聞けば心も添ふ如く 稲畑汀子

人声が人の形に夏の霧

人声が人の形に夏の霧 上田貴美子

露草や口笛ほどの風が吹き

露草や口笛ほどの風が吹き 栗山政子

十薬のつぼみのやうな昔あり

十薬のつぼみのやうな昔あり 遠藤由樹子

梅漬けて母より淡き塩加減

梅漬けて母より淡き塩加減 美濃部治子

瓜ぶらり根性問はることもなし

瓜ぶらり根性問はることもなし 山中正己

すりこ木で叩いて胡瓜一夜漬

すりこ木で叩いて胡瓜一夜漬 長谷川櫂

まむしぐさ蛇口をすこし開けてをり

まむしぐさ蛇口をすこし開けてをり 新妻 博

どくだみや真昼の闇に白十字

どくだみや真昼の闇に白十字 川端茅舎

青草の朝まだきなる日向かな

青草の朝まだきなる日向かな 中村草田男

木いちごの落ちさうに熟れ下校どき

木いちごの落ちさうに熟れ下校どき 大屋達治

薔薇の香や向ひは西脇順三郎

薔薇の香や向ひは西脇順三郎 中村真一郎

鮎焼くや空気の軽き村にゐて

鮎焼くや空気の軽き村にゐて 橋場千舟

ソ連宣戦はたと止みたる蝉時雨

ソ連宣戦はたと止みたる蝉時雨 徳川夢声

この先を考へてゐる豆のつる

この先を考へてゐる豆のつる 吉川英治

ゆるやかな水に目高の眼のひかり

ゆるやかな水に目高の眼のひかり 山口誓子

蛍火や女の道をふみはづし

蛍火や女の道をふみはづし 鈴木真砂女

死なうかと囁かれしは蛍の夜

死なうかと囁かれしは蛍の夜 鈴木真砂女

蛍を入れたる籠の軽さかな

蛍を入れたる籠の軽さかな 伊藤卓也

薄目して見ゆるものあり昼蛙

薄目して見ゆるものあり昼蛙 伊藤卓也

夏帯にほのかな浮気心かな

夏帯にほのかな浮気心かな 吉屋信子

ほうたるや闇が手首を掴みたり

ほうたるや闇が手首を掴みたり 藤田直子

一本のバナナと昭和生まれかな

一本のバナナと昭和生まれかな 北迫正男