俳句
さくらんぼ洗ふ間近に子の睫毛 花谷和子
さくらんぼ会えない時間は片想い 鬼頭文子
恋文の起承転転さくらんぼ 池田澄子
蚊柱や吹きおろされてまたあがる 村上鬼城
鳴きもせでぐさと刺す蚊や田原坂 夏目漱石
美しい数式になるみずすまし 中山美樹
休むとは流れることねあめんぼう 黒田早苗
月山の水に泳げや冷奴 丸谷才一
扇子の香女掏摸師の指づかひ 佐山哲郎
真つ直ぐに闇を上つてゆく花火 岸田祐子
手花火の小さく闇を崩しけり 蔵本聖子
雲は王冠詩をたづねゆく夏の空 仙田洋子
花火舟音なく岸を離れけり 九鬼あきゑ
ひきがへる跳びて揃はぬ後ろ足 伊藤伊那男
花火消えて山なみわたる木霊かな 土師清二
冷奴大和島根は箸の国 渡辺恭子
ひとかなし氷菓に小さき舌出せば 嵩 文彦
サングラス外しほんたうの海の色 河原敬子
水打つてあそびごころの見えており 森 澄雄
ラムネ飲み雲の裏側おもひをり 小澤利子
風鈴の百の音色の一つ選る 大串若竹
こそばゆき季語の一つに竹夫人 倉橋羊村
素晴らしき夕焼よ飛んでゆく時間 嶋田摩耶子
おまへだつたのか狐の剃刀は 広渡敬雄
胃カメラをのんで炎天しかと生く 吉村 昭
夏至今日と思ひつつ書を閉ぢにけり 高浜虚子
ガラス器に淡き影ある夏はじめ 三吉みどり
はつなつのコーリン鉛筆折れやすし 林 朋子
六月を奇麗な風の吹くことよ 正岡子規
川面吹き青田吹き風袖にみつ 平塚らいてう