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心のたねを言の葉として

『ぼくだけほっとかれたんや』

『ぼくだけほっとかれたんや』
                                                                     あおやま たかし


がっこうからうちにかえったら
だれもおれへんねん
あたらしいおとうちゃんも
ぼくのおかあちゃんもにいちゃんも
それにあかちゃんも
みんなでていってしもたんや
あかちゃんのおしめやら
かあちゃんのふくやら
うちのにもつがなんにもあらへん
ぼくだけほってひっこししてしもたんや
ぼくだけほっとかれたんや
ばんにおばあちゃんがかえってきた
おじいちゃんもかえってきた
かあちゃん
「たかしだけおいとく」と
おばあちゃんにいうてでていったんやて
かあちゃんがふくしからでたおかね
みんなもっていってしもうた
そやからぼくのきゅうしょくのおかね
はらわれへんいうて
おばあちゃんないとった
おじいちゃんもおこっとった
あたらしいおとうちゃん
ぼくきらいやねん
いっこもかわいがってくれへん
おにいちゃんだけケンタッキーへ
つれていって
フライドチキンたべさせるねん
ぼく つれていってくれへん
ぼく あかちゃんようあそんだったで
だっこもしたったし
おんぶもしたったんや
ぼくのかおみたら
じっきにわらうんねんで
よみせでこうたカウンタックのおもちゃ
みせたらくれいうねん
てにもたしたらくちにいれるねん
あかんいうてとりあげたら
わぁーんいうてなくねんで
きのうな
ひるごはんのひゃくえんもうたのもって
こうべデパートへあるいていったんや
パンかわんと
こうてつジーグのもけいこうてん
おなかすいてたけどな
こんどあかちゃんかえってきたら
おもちゃもたしたんねん
てにもってあるかしたろかおもとんねん
はよかえってけえへんかな
かえってきたらええのにな

 


「作文と教育」2000年2月号
子どもの詩  より