福島の原発事故による被害で苦しむ子どもたちがいることを知って。
「311子ども甲状腺がん裁判」を支える〜311甲状腺がん子ども支援ネットワーク(2022年11月7日 JAMMIN)より抜粋
東日本大震災から11年。
東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、「100万人に対して年間1〜2人の発症」といわれる稀少ながんであるはずの小児甲状腺がんと診断された子どもたちが300人(編注:2025年7月現在400人以上)もいることをご存知ですか。
今年、このうち6人(9月に新たに一人が裁判に参加し、現在原告は7人)の子どもが「自分の病気の原因は原発事故による放射線被曝によるものだ」として、事故を起こした東京電力を相手取り、裁判(「311子ども甲状腺がん裁判」)を起こしました。
事故から11年を経て立ち上がり、原告として声を上げたのは、原発事故当時6歳から16歳、幼稚園から高校生だった6人の若者たち。彼らが救済されるためには、原発事故に伴う放射線被曝と病気との因果関係を立証する必要があります。
この裁判を支えるために立ち上がった「311甲状腺がん子ども支援ネットワーク」が今週のチャリティー先。
「裁判の支援が活動の一つの目的ですが、その先にあるのは、甲状腺がんを発症した若い患者たちの恒久的な救済です。原発事故後に福島の小児甲状腺がんが多発していることは明らかなのに『事故は関係ない』と否定され、被害に遭っている当事者がまったく省みられていません」
そう話すのは、「311甲状腺がん子ども支援ネットワーク」を支えるボランティアグループ「311ally」のメンバー木本(きもと)さゆりさんと、19歳の時に甲状腺がん摘出手術を受けた原告の一人、ちひろさん(20代)。
裁判のこと、そして被害に苦しむ当事者たちの実態…、お二人に話を聞きました。100万人に1〜2人の発症であるはずのがんが
原発事故後、一気に増えた
──福島の小児甲状腺がんの患者と、原発事故との関係を教えてください。
木本:
甲状腺というのは、喉仏の下にある蝶のかたちをした小さな臓器です。
「甲状腺ホルモン」というホルモンを分泌していて、新陳代謝の促進したり、自律神経の働きを調節しています。このホルモンは、妊娠・出産や体の成長にも欠かせません。普段、あまり意識しませんが、とても重要な役割を担っている臓器なのです。
甲状腺に悪性腫瘍ができるのが「甲状腺がん」ですが、若い年代でかかるケースは極めて稀で、15歳以下の小児甲状腺がんは年間100万人に1〜2人と言われています。
ところがチェルノブイリ原発事故が起きた1986年以降、旧ソ連地域のベラルーシやウクライナ、ロシアで子どもの甲状腺がんが急増しました。当初は検査によるスクリーニング効果ではないかという議論もありましたが、10年後に原発事故の影響であると認められ、IAEA(国際原子力機関)といった国際機関も、被曝との因果関係を認めています。
木本:
小児甲状腺がんは、放射性ヨウ素という放射性物質に起因して発症することがわかっています。
日本では2011年に原発事故が起きた後、子どもの甲状腺がんが増えることを警戒して、福島県内ではいち早く、甲状腺がんを早期発見するためのスクリーニング検査が始まりました。
この11年間で300人(編注:2025年7月現在400人以上)もの子どもたちが甲状腺がんと診断されています。
まだ若く、これから自分の力で生きていくんだという時に、がんを告げられ、学校や仕事を辞めることを余儀なくされたり夢を断念したり…、未来を奪われ、思い描いていた人生を歩めなくなってしまった人たちがいます。そのことを認めていただきたいと思っています。
──原発事故後に甲状腺がんが増えたのであれば、因果関係は明らかというか、わかりやすいとも思ってしまうのですが、裁判で争っているのはなぜですか。
木本:
「通常より数十倍の数で多く見つかっている」ということについては、否定する人はいません。
ただ、これが原発事故によって放出された放射性物質を体に取り込んだことによるものかどうかという点については、今も意見が割れています。この因果関係をめぐって、東京電力とがんになった子どもたちが争っているのが「311子ども甲状腺がん裁判」です。
原告側は「原発事故によって被曝したことが原因である」と主張していますが、政府や福島県、また被告東京電力側は「大規模なスクリーニング検査を行ったことで、本来であれば見過ごされているような、治療しなくていいようながんが見つかってしまっただけ」だと主張しています。これは「過剰診断論」と呼ばれています。
ちひろ:
過剰診断論と言われていますが、この裁判の原告は全員、手術を受けていますので、「治療をしなくていいようながん」を見つけたわけではありません。
私自身、がんが見つかった当初、大きさは5mm程度でしたが、気管に近く、少しでも成長したら気管にがんがくっついて全身に転移する可能性がありました。見過ごして検査も手術もしていなかったら、今は生きられていないと思います。
私以外の原告6人のうち4人は再発して、2回以上手術を受けています。中には4回手術を受けている子もいます。肺に転移し、今なお治療を続けている子もいます。この現状を考えると「過剰診断論」はあまりにもおかしいなと思っています。