なぜリベラルは選挙で勝てないのか…「非自民」の世田谷区長が考える躍進した参政党と立憲民主党の決定的違い
区長がコロナ禍で痛感した野党の「覚悟」の欠落
PRESIDENT Online
保坂 展人
世田谷のリベラル区長が支持されるワケ
――全国的に右派系の新党ブームが起きている中で、世田谷区も例に漏れず都議選の得票数ツートップを自民党と参政党が占め、参院選の投票先トップは国民民主党でした。なぜ世田谷区民はリベラルな区長を選んでいる一方、参院選や都議選では保守政党を選んでいるのでしょうか。従来の「保守」「革新」という対立軸は、世田谷区にはあてはまりません。私自身が漸進的な改革、すなわち急進的ではない時間とプロセスを踏んで、じっくり対話を重ねて政策遂行するスタイルで区政にあたっています。
これまでの4回の選挙の中で、2期目、3期目、4期目と自民党推薦候補との一騎討ちが続きましたが、自民、公明支持者の半数の支持を得て、野党支持層の大半の支持と合わせて勝ってきました。
世田谷区の中で党派を超えた理解と支持が続いてきたのは、地方自治の特性だと思います。国政でどの政党に投票しようが、党派性を優先しない政策で戦う区長選は別というフレームができた結果だと考えています。
私としては、リベラルの限界がどこにあったのかを総括して、ボトムアップ型の政策形成を実らせていくことが重要だと考えています。
与党や内閣への対案というレベルではなく、各自治体や地方議員と連携しながら先駆的でオルタナティブな政策をつくり続けていきたいと思っています。
次の衆院選が日本の未来を左右する
――参院選の結果、二大政党制は遠のき、本格的な多党制になりました。この混沌とした状況から、今後、政局はどう動いていくと見ていますか。93年の「非自民連立政権」、94年に発足した「自社さ政権」や09年発足の民主党、社民党、国民新党の3党連立政権など、この30年の間にさまざまな枠組みがありました。
自公が少数与党となり、今後は連立の枠組みをめぐり駆け引きが続くでしょう。自民党の右派、日本維新の会、参政党、日本保守党の塊ができるかもしれません。今後、石破氏に代わる総理・総裁が登場しても、必然的に多数派を取るために連立内閣の模索が始まっていくのではないか。
国民民主党の動向も大きな決め手になると思います。バスに乗り遅れるなとばかりに憲法も原発も安保法制も妥協して、立憲民主党が政策変更を迫られるような事態もないとは言えません。
近年、米国のトランプ大統領の「米国ファースト」や、欧州では反移民などを旗印にしたポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭しています。世界各国で同時に起きている現象で、複雑な政治課題などを単純化し、反移民などの感情に訴える形で既存政党や政治家、既得権を持つ人々や大手メディアなどへの批判が巻き起こっています。
いま世界中がポピュリズムの嵐にのまれたり、逆に跳ね返したりしているけれども、日本で本格的な嵐の前触れが来たのが、「外国人問題」が政治課題に急浮上した今回の参院選です。
次の衆議院選挙では参院選で加速したポピュリズムの大勝利となるのか。あるいは、中道を含めたリベラル勢力がポピュリズムを押しとどめることができるのか。日本の民主主義が、その岐路に立たされていることはまちがいありません。