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心のたねを言の葉として

<戦後80年 わたしがつなぐ物語>シンガー・ソングライター 半崎美子 朗読台本「夏の雲は忘れない」

<戦後80年 わたしがつなぐ物語>シンガー・ソングライター 半崎美子 朗読台本「夏の雲は忘れない」
 
北海道新聞 2025年8月22日
 
 
半崎美子さん。「戦争を体験した方がご自身の言葉で語るほど強いことはない」と話す(金田翔撮影)

半崎美子さん。「戦争を体験した方がご自身の言葉で語るほど強いことはない」と話す(金田翔撮影)

被爆少年の願い 歌に重ねて

 札幌出身のシンガー・ソングライター半崎美子さん(44)。今年の8月6日は広島の平和記念式典に参列し、突然命を奪われた人々を悼み、平和を祈った。式典後は市内中心部や、被爆による負傷者が数多く運ばれた似島(にのしま)で、被爆者や関係者の話を聞いた。原爆投下後の壊滅的な風景や、どう生き抜いてきたのか…。「伝えることが使命という覚悟に胸を打たれた」と振り返る。
 これまで「短い文の中にいろいろな思いの結晶が詰まり、余白にもさまざまな思いを感じる」と詩集を中心に、戦争をテーマにした文学に触れてきた。2年前に衝撃を受けたのが被爆者の声を集めた朗読台本「夏の雲は忘れない」だ。
夏の会編「夏の雲は忘れない」(大月書店 1650円)

夏の会編「夏の雲は忘れない」(大月書店 1650円)


 「夏の雲は忘れない」夏の会編 広島と長崎で被爆した母や子の手記、原爆により亡くなった子供の最後の言葉などをまとめた朗読のための台本。この台本を俳優たちでつくる「夏の会」が2008年から19年まで全国各地で朗読する活動を続けた。
 子供たちの詩や母親、教師らの手記で構成。広島一中に転校して間もない少年が、命を落とすことになる原爆投下前日に話した言葉を、その母がつづった「星は見ている」に涙があふれた。
 博久少年の率直な言葉。「ねェお母さん、どうして戦争なんか起きるのでしょうか、止(や)めてほしいなあ(中略)世界が仲よくいかんものかしら。そしたら世界が一つの国家になって、世界国亜細亜あじあ)州日本町広島村になるね」。その思いや母の愛情が胸を打つ。
半崎美子さん(金田翔撮影)

半崎美子さん(金田翔撮影)

 半崎さんが作詞作曲した「地球へ」(21年発表)に込めた「私たちは地球に守られて、生かされている。争いを無くしたい」という思いとも重なる少年の願い。「地球という単位で平和を願う博久さんの思い。すべてを物語るこの言葉を忘れることができない」と話す。
 「地球へ」は合唱曲として親しまれ、全国で歌われる。24年に小学5年生の音楽の教科書に掲載されてから、全国の小学校で「特別授業」を始めた。共に歌い、感じたことなどを話し合う。「子供たちの感受性はとても豊か。歌を通して気持ちを共有できたと実感する」と言う。
 心に寄り添い、人生を応援する前向きな歌詞と、包み込むような歌声で幅広い年代から支持を集める半崎さん。「原爆が投下された事実を過去の歴史にしてはならない。私にできるのは歌にすること、歌を届ける活動を通じ、多くの人へ当事者の思いをつなぐこと」。自身ならではの平和への向き合い方を考え続ける。

 はんざき・よしこ 1980年、札幌市出身。大学在学中に音楽に目覚め、中退し上京。パン店に住み込みで働きながら曲を書き続け、個人で全国のショッピングモールを中心に活動を続けた。そうした17年の下積みを経て2017年4月にメジャーデビュー。同年11月に第50回日本有線大賞新人賞を受賞。「サクラ~卒業できなかった君へ~」など多数の人気曲のほか、道内初の公立夜間中学校の校歌を手がけるなど幅広く活躍している。9月からのコンサートツアーで全国4都市を巡り、12月2日の札幌・カナモトホールが千秋楽となる。