横須賀の交通死亡事故、米兵に執行猶予付き有罪判決「危険に危険重ねた」
米海軍横須賀基地所属の米軍人の被告の男(22)へ言い渡された執行猶予付きの判決は、遺族の心にさらに深い傷を負わせた。
犠牲となった会社員男性=当時(22)=の両親は前回の初公判(7日)に続き、被害者参加制度で出廷し、一部始終を見届けた。母(56)は閉廷後の会見で言葉を絞り出した。「非常に残念で納得いかない。被害者の気持ちが届いているのか疑問。受け入れられない気持ちで一杯」
求刑は禁錮1年6月だったが、被害者代理人の #呉東正彦弁護士は「求刑から軽すぎた。日本人であれば実刑になるような事案だが、米兵だから忖度されたのではと感じる」と指摘する。
公判では弁護側の証拠として、在日米海軍司令部の法務部長から裁判官宛への書簡があった。そこには執行猶予判決が確定すれば被告を迅速に米国へ帰国させることなどが書かれていた。父(64)は「遺族は死ぬまで悔しい思いを引きずるが、被告人は帰ってしまえば何もなかったことになる」と憤る。呉東弁護士によると、書簡が送られるのは異例といい、「『米側の圧力』は司法の独立を脅かす」と懸念する。
被告は「在日米軍人個人車両操縦許可証」により事故後も運転可能で、基地内では週4度ほど運転していた。同弁護士は「米兵を優遇する特権的な仕組みが問題だ。市民が泣き寝入りを強いられる構造を改めなければならない」と訴えた。
この日、弁護団は横浜地検横須賀支部に対し、量刑不当により控訴を申し立てるよう要請。同司令部宛てに▽民事裁判などにより損害賠償するまで帰国させないこと▽交通事故再発防止対策の速やかな実施▽日米地位協定に基づく見舞金制度による遺族への速やかな救済を求めた。
(神奈川新聞5月27日 矢部真太)