「具体的危険、認められず」 伊方原発3号機の安全対策 松山地裁
愛媛県西部の伊方町にある四国電力伊方原発3号機の安全対策に不備があるとして、地元住民ら約1500人が原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決で、松山地裁は18日、請求を棄却した。
菊池浩也裁判長は国の原子力規制委員会の審査が妥当だとし、「安全性を欠いているとは認められない」と判断した。
佐田岬半島の付け根にある伊方3号機は1994年に運転を開始。規制委は2015年、東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に適合したと認めた。
住民側は訴訟で「運転中の事故で放射性物質が放出され、生命や身体への危険がある」と主張。12年半に及んだ審理では、原発施設の耐震性の目安となる基準地震動(650ガル)の妥当性や火山噴火対策、原発事故時の避難計画の有効性が主に争われた。
判決はまず、原発の沖合約8キロにある断層「中央構造線」による地震リスクを検討。調査に基づく四電の断層評価は適切なうえ、余裕を持たせて基準地震動を策定しているとし、不合理ではないと判断した。
火山噴火対策を巡っては、約130キロ離れた阿蘇山(熊本県)の地下浅い部分にマグマだまりは存在しないと言えることから、「巨大噴火は差し迫っていないとする四電の評価は合理的だ」と述べた。九州地方の別の火山による噴出物の想定も妥当だとし、安全性に問題はないとした。
住民側は事故時の避難計画に不備があると訴えたが、判決は事故が起きる恐れがないとして詳しく判断しなかった。そのうえで運転を認めた規制委の判断を追認し、「住民らに具体的な危険があるとは認められない」と結論付けた。
判決を受け、住民側は控訴する方針。四電は「安全性が確保されているとの主張が認められた。不断の努力を重ね、安全運転に万全を期したい」とコメントした。
3号機を巡っては、17年と20年に広島高裁が仮処分決定で運転を差し止めたが、いずれも四電側の異議申し立てで覆っている。24年以降では正式裁判による判決が大分、広島両地裁で出されているが、いずれも運転差し止めを認めなかった。
【毎日新聞3月18日 山中宏之】
