12月17日。日本の電力政策の骨格となる、新たなエネルギー基本計画の素案が公表された。
この中で示されたのは2040年度の電源構成。
電源の脱炭素化と電力の安定供給を両立させるため、再生可能エネルギーを最大の電源とする一方、原子力も最大限活用し「2割程度」になるとした。
昨年度の実績と比較すると倍以上にあたる。
今政府は、原発の最大限の活用に舵を切り、新たな原発の建設も進める方針だ。
原子力は再びエネルギーの主力となりうるのか。現場を取材した。
(新潟局 伊藤奨・奥村敬子/科学・文化部 橋口和門)NHKプラス
道半ばの再稼働
2040年度に「2割程度」を実現するには、ほぼすべてが稼働する必要がある。
しかし、未稼働の19基のうち7基は原子力規制委員会による審査中で、9基は審査の申請もしていない。
また、残る3基は審査に合格したものの再稼働の見通しは立っていない。
いったいなぜなのか。準備進める現場は
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柏崎刈羽原発 ![]()
7号機原子炉建屋 6号機と7号機はすでに原子力規制委員会の再稼働の前提となる審査に合格。
7号機ではことし4月に原子炉に核燃料が入れられ、6号機も来年6月に核燃料を入れる計画で、設備面の準備は最終段階に入ろうとしている。原発事故の教訓を胸に
東京電力 長谷川拓グループマネージャー
「震災以降、会社に入社したメンバーも多い中で、こうした緊急時対応能力を日々、訓練で磨き上げ人材育成を続けている。安全対策設備を動かすのは結局人間なので、今後も訓練を継続して行って力量をあげていきたい」慎重姿勢の新潟県知事
新潟県 花角知事
「県民の受け止めについてさまざまな場で意見を聴き、県民の意思がどう固まるのか見極めていきたい」原発周辺に広がる不安
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2022年12月 新潟県柏崎市 集落では交通がまひした上、5日間にわたって停電が続き、生活に大きな影響が出た。 品田さん
「一時的ですけど道路除雪がままならなくて、孤立的な状況になった。今回の大雪からすればリスクが高まった時にどうするんだろうという不安は少なからず大きくなった」大雪で集落の一部が“孤立”
当時、町内会長を務めていた品田さんは、状況を伝えるため集落に配備された防災行政無線で同じ地区の自主防災会本部に連絡しようとしたが、本部がある施設は大雪で担当者が1人しか出勤できなかった上、避難所の開設などの対応に追われ連絡がつかなかったという。![]()
2023年1月 柏崎市北条地区 大雪や倒木で集落内の移動や連絡も十分に行えず、集落の3世帯の安否確認も困難に。
除雪業者もなかなか来られず、集落内の主要な道路の除雪が終わったのは3日後だった。
品田さんは当時の経験から、大雪と原発事故が重なった場合、外部からの支援が得られず、体調を崩す住民が出るのではないかと危惧している。 品田さん
「この集落は年寄りだらけですから健康状態の維持は非常に難しいといいますか。慎重に考えていかないといけないんだろうなと。屋内退避をするにしても、インフラ関係が完全にふだんどおりであれば可能だけど、一部でもインフラが滞っていたりしたときに本当にできるのかどうかは不安ですね。本番のときに、本当に大丈夫なのか」県民投票を求める動きも
知事は国の対応を注視
“原発最大限活用”のもう一つのカギは
原子力支える産業は
しかし、製造経験のある技術者の多くが55歳を超え10年後には定年を迎える中、若手に経験を積ませる機会に乏しく、技術の継承が難しくなっているという。
また、具体的な原発の新設計画が打ち出されていないため、設備投資にも踏み切れていない。 奥井一史社長
「安全上重要なバルブの設計製造は、新増設やリプレースでしか経験できないことが非常に多い。原発の新設となると設計開始から運転開始まで10年以上と長期間にわたる。人材育成や設備投資はまったなしという状況なので積極的に推進してほしい」サプライチェーンの劣化が建設コストにも
国内では最後に新しくつくられた原発が運転開始してからすでに15年がたち、建設に携わった企業や人材は減少傾向にある。
こうした状況は、同じく長期間原発がつくられず、久しぶりに建設を再開した欧米で深刻な影響を及ぼしている。
フランスやイギリスでは新しい原発の建設が進んでいるが、建設期間が長期化し、部品製造が滞るなどした影響で、建設コストが当初の見込みの倍以上の数兆円規模に膨らんでいる。
大手電力会社でつくる電気事業連合会は、原発の新設には巨額の初期投資が必要なうえ、事業期間が長期にわたることから投資を回収できなくなるリスクが大きいとして、政府に対し民間の投資を後押しする仕組みの検討を求めている。
政府も検討を進めているが、最終的に電気を使う消費者から回収する形になる可能性もあり、結論は出ていない。これからのエネルギーの話をしよう













