維新の兵庫県議 選挙を歪めた自覚はないのか
2025/02/25 読売新聞
昨年11月の兵庫県知事選で、県議が真偽不明な情報を拡散させていたとは、驚きを禁じ得ない。公正であるべき選挙を 歪 ゆが めた責任は重大だ。
しかも記者会見では、謝罪する一方、自らを正当化するような釈明も行った。県民は、自分たちが選んだ議員の言動をどう受け止めているのだろうか。
斎藤元彦知事を巡る内部告発問題で、日本維新の会の県議3人が知事選の最中、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に、告発した元県幹部の私的情報に関わる、音声データと文書の提供などに関与していたことを認めた。
音声は、県議会百条委員会が非公開と決めていた元副知事の証人尋問を、県議がひそかに録音していたものだという。元副知事が、告発とは何ら関係のない元県幹部の私的情報に触れようとして、制止された場面が含まれていた。
一方、立花氏に渡した文書には、元県幹部や、知事を追及していた元県議を中傷するような内容が書き込まれていた。作成者が不明なものもある。
こうした情報を基に立花氏は選挙戦で、非があるのは元県幹部であり、「斎藤氏は悪くない」といった主張を展開し、斎藤氏を応援した。その後、知事を追及していた元県議も批判の対象にした。
結果としてSNS上には不確かな情報が氾濫し、 誹謗 ひぼう 中傷の拡大だけでなく、選挙結果にも影響を及ぼした可能性がある。
県議3人の行動は、立花氏を利用して意図的に世論を誘導した、と言われても仕方あるまい。
元県幹部も、知事を追及していた元県議も死亡した。元県議は誹謗中傷に悩まされていたという。いずれも自殺とみられている。
今回の問題を受け、県議2人は責任を取って百条委の委員を辞めたが、それで済む問題なのか。
記者会見では、立花氏に情報提供した理由について「県民が知るべき情報をメディアが流していない」と述べた県議もいたが、筋違いも甚だしい。真偽不明な情報を報じないのは、事実に基づいて伝える報道機関として当然だ。
県議3人は昨年、知事の不信任決議に賛成していた。その後の知事選には元維新の候補も出馬していたのに、斎藤氏を応援していたことになる。政党として維新の統治機能はどうなっているのか。
維新の吉村洋文代表は、今回の県議の行動について「本人たちの思いは分かるが、ルール違反だ」と述べている。身内に甘い姿勢が緩みを招いているのだろう。