社説 政策活動費の全面廃止 改革の「宿題」残ったままだ
毎日新聞
2024/12/18
これで終わりではない。カネで国政を動かせる仕組みを解消しなければならない。
自民党派閥の裏金問題を受けた政治資金規正法改正案などが衆院を通過し、今国会で成立する見通しとなった。政党から議員に渡され、使途公開の義務がなかった政策活動費は全面的に廃止される。
不透明なカネを自民幹部らが野放図に使える政活費は、金権政治の温床だと指摘されてきた。全面廃止は当然だ。
審議を通じて目に付いたのは、何とか「抜け穴」を残そうとする自民の悪あがきぶりだった。政活費を廃止すると言いながら、外交上の秘密などの名目で非公開にできる「公開方法工夫支出」を新設しようとした。
しかし、野党が「新たなブラックボックスになる」と強く反対したため、断念に追い込まれた。結局、立憲民主など野党7党が提出した全面廃止法案に賛成せざるを得なくなった。
政治資金をチェックする第三者機関の設置についても、全体を幅広く監視できる公明、国民民主両党案に相乗りした。自民案で監査対象となっていた公開方法工夫支出がなくなったためだ。自民が譲歩したのは、少数与党として、野党の主張を受け入れなければ法案を成立させられないからだ。与野党伯仲の状況下で「熟議の国会」の実現を模索し続けなければならない。
一方で大きな問題が残った。企業・団体献金の扱いを巡り、与野党は「来年3月末までに結論を得る」として先送りした。自民が禁止に慎重な姿勢を崩さず、野党の足並みもそろわなかった。
企業・団体献金は政策をゆがめる懸念が強く、「平成の政治改革」の結果、禁止する方向が定まっていたはずだ。石破茂首相には早急に決断する責任がある。
野党も、来夏の参院選での争点化を狙って、議論をいたずらに引き延ばすようなふるまいは避けるべきだ。与野党が協力し、来年の通常国会で結論を出さなければならない。残された「30年来の宿題」に直ちに取りかかり、改革を徹底することが欠かせない。それこそが、根深い国民の不信を払拭(ふっしょく)する唯一の道である。