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心のたねを言の葉として

〈社説〉米兵の性暴行 やまぬ被害 隠すつもりか   2024/06/29

〈社説〉米兵の性暴行 やまぬ被害 隠すつもりか

2024/06/29 信濃毎日新聞

 

 沖縄で、米兵が女性に性暴力を振るう事件がまたしても起きた。米軍基地が集中するがゆえに繰り返されてきた犯罪である。

 加えて、在日米軍地位協定によって日本の捜査権や裁判権が制限され、米兵が守られている現実がある。政府は、深刻な被害に向き合い、米軍基地の削減と、地位協定の見直しに取り組まなければならない。

 16歳未満の少女を誘拐して性的な暴行を加えたとして、嘉手納基地に所属する米空軍兵長の男が起訴された。性暴力は被害者の尊厳を踏みにじる行為であり、とりわけ子どもに及ぼす影響は重大だ。許しがたい事件である。

 にもかかわらず、昨年12月に事件が起きてから半年も公表されないままだった。今週に入って報道で表に出るまで、沖縄県にも伝えられていなかったという。

 外務省は、那覇地検が今年3月に起訴した時点で米国の駐日大使に抗議したが、県には連絡していない。情報を共有するかは捜査機関の判断だとする説明は、責任逃れにしか聞こえない。

 名護市辺野古への新たな米軍基地の建設をめぐって、県が拒んだ設計変更の承認を、政府は昨年末、代執行により強行した。今月の県議選も控え、米軍が関係する事件を伏せようとする政治的な意図は働いていなかったか。

 沖縄は、戦後の米軍統治を経て1972年に日本に復帰してからも、米兵らによる性暴力被害が絶えない。95年には米兵3人が少女を暴行する事件が起き、2016年には20歳の女性が米軍属の男に暴行され、殺害された。

 地位協定は、公務外の事件については日本の裁判権を優先するものの、起訴されるまで米軍が身柄を拘束できる。95年の事件後、凶悪犯罪の場合は、引き渡しに「好意的な配慮」をすることで合意したが、あくまで米軍の裁量だ。

 捜査当局が身柄の引き渡しを要請することは少なく、今回の事件でも求めなかった。通常の犯罪捜査では考えにくいその姿勢にも、米軍に拒否されて政治問題化するのを避ける意図がちらつく。

 そもそも県警が重大な事件を公表せず、県にも伝えなかったことは納得しがたい。5月に別の性暴行事件で米兵を逮捕したことも公表していなかった。捜査当局の姿勢もまた厳しく問われる。

 問題の根幹にある地位協定を運用の改善にとどめ、綱紀粛正を訴えるばかりでは、状況は変わらない。政府は協定の抜本的な改定を米国に強く求める必要がある。