西沢昭裕5月21日 FBより
現生人類(ホモサピエンス)の出アフリカは六、七万年くらい前らしいが、あまりに古い話はさておいて、ごく最近のここ数千年くらいに話を絞りたい。
四大文明はみなアジアとアジア周辺の大河の流域で起きたのだから人類文明の元祖はアジアであった。
やがて西方にギリシア文明が起きてローマ帝国が成立し、東方の大唐帝国など中国の諸王朝との間にシルクロード経由で文物が行き交った。そしてローマ帝国は地球上の辺地だったヨーロッパを「いわゆる文明国」におしあげ資本主義がかの地でいちはやく誕生した。
資本主義が発展したイギリスなどの石炭と蒸気機関による産業革命によって強大な軍事力をもつ国民国家がヨーロッパにつぎつぎ成立し、アメリカも対英独立戦争や奴隷制廃止をかかげた南北戦争の終結で産業革命に成功。セポイの反乱やアヘン戦争などの間隙をぬって日本もあやうく植民地化をまぬがれた。
その日本まで欧米列強に加わってアジア、アフリカ、ラテンアメリカをほとんど全て植民地にしてしまった。
こうしてアジアは200年近く経済的には低迷することになる。
しかし、人類史の表舞台はふたたびアジアの時代に回帰しつつある。
青山学院大学の羽場久美子教授や日本総合研究所の寺島実郎会長などの論考を参考に以下、メモ書きしてみたい。
いまは西暦2024年だが、76年後の西暦2100年には、アジア・アフリカが世界人口の8割を占め、米欧は人口では1割に過ぎなくなる。
実は西暦0年から1820年までの1800年間にわたり、中国とインドの2国で、世界経済のほぼ50%を超える時代が古代から近世まで続いていた。いわば、延々18世紀間にわたって人類史はアジアの時代でもあった。
ところが、1820年以降、近代化にのりおくれたインドはイギリスの植民地になり、中国はアヘン戦争(1839~1842)以降、半植民地状態となって新興資本主義国の日本帝国主義の侵略もうけて経済力が極端に落ち込んでしまった。
イギリスをはじめとする産業革命で近代的な軍事力を手にした欧米諸国がアジア・アフリカ・ラテンアメリカをいかに一挙に植民地にしたかは、ロンドンの大英博物館に行くとわかりやすい。「いわゆる先進国」のもつ文物や富のほとんどはかつての豊かな諸民族を軍事力で制圧、植民地化し収奪したものにほかならないのだ。(最近、奴隷制と植民地支配の歴史的責任を問う声が欧米諸国で起きていることに私は注目している)
しかし、第二次大戦後、ほとんどの植民地が宗主国との解放戦争に勝利して独立し国連の加盟国になった。
さらに21世紀に入り中国、インド、ブラジルなどアジアとBRICSの時代が始まり、2010年に日本を抜いた中国のGDPはたった13年間で日本の4倍に躍進、2030年には中国がアメリカを抜くと予測される。インドは世界第5位のGDP大国となりドイツにぬかれたばかりの日本をもいずれ抜くことは確実で、かつてはポルトガルや日本の植民地だったブラジルや韓国が急上昇している。平和外交に徹して軍備より経済重視のASEAN諸国の急上昇にはじつに目を見張るものがある。
購買力平価ベースでみると、インドネシアとブラジルはイギリス、フランスを抜き、トルコはイタリアを抜いてフランスに迫っている。いまや欧米の時代が終わったかのようだ。
米国の金融大手、ゴールドマンサックスが2023年4月に出した統計予測が興味深い。(下の図表)
2075年、あと50年で世界のGDPの順位はこうなる。
中国・インド・アメリカ・インドネシア・ナイジェリア・パキスタン・エジプト・ブラジル・ドイツ・イギリス・メキシコ・日本の順で、日本は12位。以下、ロシア、フィリッピン、フランスが続く。
50年後の世界の5大国は中・印・米・インドネシア・ナイジェリアとなる予測。(わたしはナイジェリアについては不覚にも無知であった。もっとも大国の仲間入りをしたからその国民が幸せとは限らない。コスタリカもブータンも小国であるが国民の幸福度は高い)
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第2次大戦後、世界は米ソ2大国に支配されたが、ソ連はすでに1991年に崩壊。
ウクライナ戦争をはじめてしまったロシアはさらに弱体化するのは間違いない。
いっぽうアメリカももはや衰退傾向を脱することはできない。2000年にはアメリカは世界GNPの30.1%を占めたが23年には26.1%。日本は2000年に14.6%から23年にはわずか4.0%で世界からすっかり埋没してしまった。これが世に言う「失われた30年」の実相。
すでに日本を除くアジアのGDPは日本の6倍。中国への敵視政策に熱心なアメリカや日本の支配層の非常なあせりの背景はここにある。IT産業をささえる半導体などの猛烈な覇権シェア争いの原因もここにあるのは言うまでもない。
日本の人口は1967年にはじめて1億人を超えたがちょうどこの年に日本のGDPもアメリカについで世界第2位になったと騒がれた。そして、2008年の1億2008万人をピークに減少に転じて2060年には8674万人にまで減少すると見込まれている。
以上の論考はあくまで人類が核戦争によって滅びないことが大前提である。
原発事故による破滅的な放射能汚染や地球温暖化による異常気象を人類がのりこえて生存に必要な食糧を生産し続けてこの水の惑星に子々孫々、人類が住み続けられることが前提であることはいうまでもない。
第二次大戦後に独立を勝ち取り国連に加盟した諸国が主導して核兵器禁止国際条約が122カ国の賛成で2017年7月7日に成立したことはこれからの世界政治の担い手がどこにあるかを象徴的に示しているではないか。
羽場久美子教授は「沖縄を東アジアの平和のハブに」と主張し、寺島実郎氏は「ASEANを中核に東アジアサミットに米中ロを柔らかく巻き込み、国連アジア太平洋本部の創設とその沖縄誘致」を提案している。
こうみてくると、日米軍事同盟を日本国憲法の上において、被爆国でありながら核禁条約に背を向け、先制攻撃できるミサイル部隊を沖縄諸島に配備し辺野古に米軍新基地を日本国民の税金で建設するなどの大軍拡路線がいかに時代錯誤であることか。