ippo2011

心のたねを言の葉として

『草のそよぎ』 天野忠

『草のそよぎ』 天野忠

 

時間という草のそよぎに頬っぺたを吹かれているような老年。ヴァレリーが云ったように神は無からすべてのものを創り出したのだから、人間の材料も無から成り立っているわけで、老年も幼年も青年も、すべて無であるというわけだ。草のそよぎというような無の情感は、老年の無をやさしく撫でていく。暖簾が揺れているのは無が無と遊んでいるような風景であろうか。